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act.105

 ウォレスの身体が動く度に、ささやかな水音と共にゆらりと穏やかな湯気が立ち登った。
 マックスはその肩に背中から両手を這わせる。
 堅くなった筋肉のコリをゆっくりと揉み解すと、ウォレスがホォ・・・と熱く艶やかな吐息を吐いた。
 一階のキッチン奥にあるバスルームは、ウォレス家のそれと比べると少し狭い。叔母のパトリシアの好みで、淡いチェリーピンク色のタイルで覆われた上に、猫足つきのバスタブが置かれてある。大の男二人で入るにはさすがに無理があり、今は上品で華奢なバスタブにウォレスが身体を預けている。マックスは服を着たまま、普段はバス用品が置かれてあるタイルのせり出しに腰掛けて、ウォレスの疲れ切った身体を手で解してあげることにした。白のYシャツを腕まくりして、ウォレスの肩を優しく揉む。
 ウォレスは、マックスも身体が本調子でないのだからと遠慮する素振りを見せたが、結局はマックスが強引にバスルームに乱入した。
 今は、一時でも一緒にいたい。片時も離れていたくない。目を離した隙に、ウォレスが消えてなくなってしまいそうな気がしてならなかったから。
 レイチェルが支度してくれた風呂のお湯には、ムスクの香りがするバスビーズが浮かべられていて、バスルーム全体が優しげなくせに少し官能的な香りに包まれていた。乳白色のお湯が立てるその香りは、ウォレスによく似合う香りだ。エレガントでいて、静かなセクシーさも漂わせているような。
 この香りに追い立てられているのか、それとも久しぶりに愛する人の肌に触れているせいなのか、マックスの心臓はドキドキと昇ぶっていた。正直、レイチェルにしてやられたと内心思ってしまう。
 その反面、ウォレスはすっかりくつろいだ表情を見せていた。
 少し上向いた顔。気持ちよさそうに目を閉じている。
 真っ黒く長い睫。高い鼻梁。いつもより彼をワイルドに見せている無精ヒゲ。
 頬は湯で温められていてほんのりと紅い。安心したように吐息をつくその表情が、まるでメイクラブをしているような錯覚を覚えさせ、益々マックスの胸は高鳴った。
 焼き籠手の跡が残る左腕に手を這わせると、ウォレスが薄く目を開いた。
 バスルームの明かりに照らされて、ウォレスの瞳がいつもより鮮やかなブルー色に濡れているように見える。
 マックスは、病院で作業療法士のケリーがリハビリの時にしてくれていたように、ゆっくりと筋に沿って腕を揉み解していく。
 腕の外側は数々の傷跡があり、ぼこぼことしているが、腕の内側はウォレスが生まれた時のままの柔らかく滑らかな皮膚が残っている。その下にある逞しい筋肉は、長いこと緊張状態にあったのか、随分凝り固まっていた。マックスと離れていた間、無茶をしていたのだろう。きっと彼の身体も魂も休まる時がなかったに違いない。
 マッサージを続けながら、ウォレスの瞳を見つめ、マックスは彼の左耳の後ろにキスを落とした。
 ウォレスがフフフと小さく笑う。
「気持ちいい?」
 マックスがウォレスの顔を覗き込んで訊くと、
「・・・くすぐったい」
 と答えた。
「腕が? 耳の方?」
「ん・・・どっちかな」
 ウォレスは惚けているが、本当は耳の後ろが弱いことをマックスは知っていた。
 マックスがもう一度、今度は少し跡が残るように耳の後ろをきつく吸うと、「ん・・・」と緩く鼻を鳴らした。
 マックスは、右手をするするとウォレスの胸元に這わせ、厚い胸板を撫でる。その指がいたずらに乳首を捕らえると、その手をウォレスの手が掴んだ。
「これ以上は駄目だよ」
 マックスは額をウォレスの頬に擦り付け、鼻を鳴らす。
「・・・何でです?」
「何でって・・・。分かるだろう」
 ウォレスは、照れくさそうに言葉を濁す。
「これ以上そうされると、我慢がきかなくなる。君の身体はまだ完治していないし、無理はさせたくない。それに・・・」
 ウォレスは更に赤くなった顔をマックスから隠すように俯いた。
「この家ではマズいよ。君の家族がいるんだから・・・」
 初めての時は、会社の医務室であんなに大胆なことをしてみせたウォレスが、今更になってそんなことで照れているのが妙に可愛く思えて、マックスは自分の服が濡れるのも構わずに、後ろからウォレスの身体を抱きしめた。
「何だか、形勢逆転って感じ」
 今度はマックスがフフフと笑い声を上げる。
 ウォレスもおかしくなってきたのか、共に笑い声を上げる。
「ホント言うとね・・・」
 マックスがウォレスの耳元で呟く。ウォレスが「ん?」と訊き返すと、マックスはバツが悪そうに呟いた。
「セスから釘刺されてるんです。今夜はあなたをゆっくりと休ませてあげないと駄目だって」
「私を?」
 ウォレスが意外そうな顔をしてマックスを見上げてくる。
 マックスはそんなウォレスの表情を見て、呆れた風に溜息をついた。
「まったく・・・。あなたは自分がどれほど酷く疲れているか分かってないんですか?」
「そんなに酷い顔してるかい?」
 マックスは少し返事に臆してしまう。
 やつれた感のあるウォレスの顔は、確かに以前のウォレスと比べ『酷い』顔つきだったが、それもまた魅力的に感じている自分がいるのが不謹慎のような気がして。
 以前は、こんな無精ひげを伸ばした顔を見せたり、マックスに甘えるような仕草などを一切見せたことのない彼だった。
 マックスが甲斐甲斐しく世話をする手に素直に身を任せている彼が、愛おしくて仕方がない。
「俺・・・酷い男かも知れない」
 ウォレスの質問に答えず、マックスはそう呟いて額をウォレスの肩にコツンとぶつける。
「なんで?」
 ウォレスが戸惑いの声を上げるのを聞いて、マックスはボソボソと答えた。
「あなたがこれほど疲れているのが分かってるのに、死ぬほど犯して貰いたいし、犯したいって思う。その時の声を誰に聞かれたって構わないし、平気だって思う。俺・・・めちゃめちゃガッついてます・・・。すみません」
 マックスの大胆な発言に、ウォレスは益々赤面させた。
 長い間離ればなれになっている間に、マックスは随分と逞しくなった。
 ナイフを持つ手を抑えられた時には夢中で気が付かなかったが、浅い眠りから覚めて改めてマックスを見つめると、病院で別れた時より雰囲気が変わっていることに気が付いた。
 素直さや穢れのなさは相変わらずだったが、ウォレスを受け止めてくれる度量が大きくなったような気がしていた。そういうものは目に見えないものだからはっきりとは言い切れないが、以前のどこか自信なさげな頼りなさがなくなり、名実ともに大人の男といった心の大きさが感じられる。そのくせ、少年っぽい屈託のない笑顔を浮かべるのだから始末が悪い・・・。
 ようは、益々魅力的になったということだ。
 そんなマックスを久々に身近に感じることが出来て、逆にドギマギしている自分に、ウォレスは戸惑った。
 元々生粋のゲイという訳ではないウォレスだったが、髪を短くして容姿も男っぽくなったマックスに堪らない魅力を感じる。
 マックスのことを天使のように神聖なものとして捕らえている自分がいるのと同時に、彼に対して露骨な性的欲望を感じてしまう自分がいるのも事実である。しかも、事に及べば、自分が彼を抱く方がいいのか、それとも彼に抱かれてしまうのか、どうなるのかが全く分からない。
 マックスの大胆発言に顔がカッと熱くなったのは、実際に自分がそう思っていたからだ。
『その時の声を誰に聞かれたって構わない』は別として。
「ひょっとしてジム・・・怒ってる?」
 ウォレスが返事を返さないのを気にしているのか、恐る恐ると言ったようにマックスが顔を上げる。そこには、湯のせいだけでなく顔を上気させたウォレスの横顔があった。
「君のせいだからな」
 恨み言など一回も言ったことのないウォレスが、バツが悪そうにそう呟き、マックスの手を取った。
 あっとマックスが思う間に、乳白色の湯の中に手を引き入れられた。
 マックスの指の先に触れたそこは、俄に興奮していた。

以下のシーンについては、URL請求。→編集後記

 

Amazing grace act.105 end.

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編集後記

すみません!
なにがすみませんって、いちゃいちゃしか書いてないっす! いちゃいちゃのみです!! いちゃいちゃしたい気分なんです!!
したがって、ストーリーは何も進みません。がはは。
つかまったジェイコブがどうなったか、とか、回収された爆弾がどうなったか、なんてことは知りません。知らぬ存ぜぬでレッツ・エッチです。つーことは、マックスもウォレスも、ゲッツっ!って感じですか? 
・・・。
・・・いかん、ダンディに40円払わなきゃ・・・。←知らない人には全く受けませんね、これ。
それにしても、今回本当にぎりぎりまで浮かんでこなかったなぁ・・・。
国沢自身、迷ってしまって。どっちがどっちなの????と。
ということで、迷ったまんま書いてみました。その影響が、モロ、ウォレスに出ちゃって、彼もまた迷ってしまっている訳ですが。
そしてそして、久々に大胆発言のマックスですが、乙女とは思えないどぎつい発言をかまして、もはや乙女ではなく野獣なのかと国沢もドキドキしてしまいます。乙女マックスファンの方は、ちょっと寂しくなっちゃいましたかね・・・。ときめく心はいまだ乙女なのよ・・・とか思ってるんですけど、無理がありますか(脂汗)。まぁ、もうすぐ三十歳の男ですからね。ええ。
なんだか今回、書いてる本人がキャラクター萌え状態になっちゃってるようで、すみません(汗)。
本当にバカですねぇ(脂汗)。連載が三桁も過ぎると、脳髄が盆踊りし始めるんでしょうか。
そんなバカ話はともかくとして・・・。
今回のエロは、長さでは『触覚30.5話』に負けるものの、濃厚でっせ、お客さん。(←ワルだ! ワルの顔だ!)
国沢にとって、二つの大試練を乗り越えました。
ま、それはメール配信の最後で解説するとして。
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では、いつもの決まり文句をどうぞ。

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[国沢]

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