新入社員 桃子のドキドキ篠田さん観察日記
みっなさ~ん! はじめましてっ♥
今年の春、お酒の卸売りをしてる会社KAZIMIYAに入社した、古賀桃子です((´艸`*))
会社のおネェ様方からは、「桃太郎」って呼ばれてます!
なぜかな?(゚ー゚*?)オヨ?
そんなことはさておき、今桃子は、先輩社員の篠田俊介さんに夢中♥♥♥ 彼、ホンットにカッコいいんですよ~。
桃子が篠田さんのことを知ったのは、つい先日。桃子がオジサン社員 ── 総務課の課長さんとやらに命令されて、たっくさんの書類を台車で運んでた時。
桃子ったらか弱いから、エレベーターに台車が入らなくって四苦八苦してたんですぅ。
エレベーターのドアはビービー言うし、台車はあちらこちらにガツガツぶち当たってちっとも真っ直ぐいかないし、ドアは勝手に閉まってきちゃうし~~!!!(>_<) もうどうしたらいいのぉって思ってたその時。桃子の背中ごし、また閉まりかけたエレベーターのドアを抑えてくれる腕がにゅっ♥と伸びてきたんです!
桃子の頭のすぐ上に黒いスーツに包まれた脇の下が見えて、彼のジャケットが丁度桃子の頭の後ろに覆いかぶさる感じっていうんですか?
突然の急接近に、思わずときめいちゃったアタシ。
わぁ、なになに? 後ろから包み込まれるこの感じ♥
オジサンだったら幻滅しちゃう~~って思いながら、振り返ってみたら。
最初は思ったより凄く背が高くて、顔を上げても一瞬顔が見えなかったの。でも更に上を見上げると、そこには爽やかで優しげなイケメンフェイスが!!!
「俺が押さえてるから。ゆっくり入れたらいいよ」
え~~! やだぁ、きゅんときちゃう!
「すみませ~ん」
2オクターブ高い声が思わず出ちゃった♥
ドアを押さえてもらったんでこれでドアに台車が挟まれることはなくなったけど、それで台車が真っ直ぐ動いてくれるわけもなく。ぎっちょんぎっちょん台車を押したり引いたりしてたら、彼が空いてる方の手で台車の取っ手の端っこを一緒に押してくれたんです。そしたら、あっという間にエレベーターの中に台車がピタリと収まって! すっごぉい!
二人でエレベーターに乗り込むと、「何階?」って彼が訊いてきてくれて、桃子が「最上階です~」って答えると、「資料室に行くんだね、お疲れ様」って言いながらニコッと笑ったの! やだぁ、小さな八重歯がちよ~~かわい~~!
最上階に着くまで、エレベーターの個室に二人っきり♥
肩幅も背中も広くて、ガタイよさそう♥ お尻も見たかったけど、それはジャケットとダンボール箱に隠れて見えなかった。── うーん、残念 (キ▼Д▼)y─┛。
でもさっきはこの背中に包まれたのねぇ~♥ なんて妄想してたら、あっという間に最上階に着いちゃった。
ドアが開くと、また彼がさっとドアを押さえてくれて、ついでにまた台車も一緒に押してもらって、最上階フロアに無事到着ぅー(^o^)/
「ありがとうございましたぁ! 助かりましたぁ」
振り返って言うと、彼は「別にたいしたことないよ、これくらい」って言って、エレベーターに乗ったまま、ドアを閉めたんです。
あれ? 彼もてっきり最上階に用事があるんだと思ってた。
エレベーターのサインを見てると、エレベーターは3階で止まったの。
ってことは、桃子のためにわざわざ最上階まで付き合ってくれたってこと!?
きゃぁ~ん! やっさし──!♥♥♥
でもドジっ子な桃子ちゃん。彼の名前を訊くの、忘れちゃった。てへっ!
3階っていうと、営業部のあるフロアだよね。ってことは、営業さんに違いない。
桃子は営業の仕事なんて大変そうだから、新人研修を受ける時にそっちのコースは志望しなかったの。お陰で総務のオジサン社員が研修の担当者に当たっちゃったんだけど、あんなにカッコいいイケメンが営業にいるんだったら、営業部の研修を受ければよかったのかなぁ(^◇^;)。ちょっと失敗。
お昼休みに同期の子たちとランチしながら、彼のことを話したら、「え~! 桃太郎ったら、篠田さんのこと、知らないのぉ!?」ってメッチャ驚かれちゃったよ。ってか、営業部のイケメンってキーワードだけで篠田さんの名前が出てくるって凄いよね。
営業部の花形っいえば、ワイン課かなぁ? それとも蒸留酒課かなぁ?
ワクワクしながらそう訊いてみると、「え? 篠田さん、日本酒課だけど」って皆から一斉に言われた。
え? 日本酒課? ── じ、地味・・・。
・・・・・。
さ、それはさておき!
私のマイダーリンは、篠田俊介さんってお名前だということが判明♥
なぜか皆からは、「篠田さんは諦めた方がいいよぉ」と言われて。「えー? なんでなんで???」って訊いたら、皆は顔を見合わせて、「ねぇ~」って頷きあったの。
えー? そんなこといわれても、桃子はわっかりませ~ん!
絶対桃子は、篠田をトリコにしちゃうぞ♥って思って、まずは篠田さんの生態調査開始!
朝は近くの駅から歩いて出社。遅刻もほぼないみたい。お陰で桃子も、出社時の篠田さんをキャッチするために遅刻することがなくなりました~!
受付のおネェ様方からは、「なんで桃太郎が毎朝受付にいるんだよ」ってツッコまれてるけど、桃子は全然気にしなーい!
さも受付嬢の一人ですって顔をして篠田さんに「おはようございます♥」って挨拶すると、次第に篠田さんも桃子が受付嬢の一人だって思ってくれたみたい。ちゃんとこちらに顔を向けて「おはよう」って返事を返してくれるの。
朝からイケメンの爽やかな笑顔! ヤバい、テンションあがるぅ~!
女子社員は、口々に「篠田さんは諦めろ」って言うくせに、受付のおネェ様たちも篠田さんの笑顔にデレデレ。どうせ皆も狙ってるから、ライバルをすくなくするためにそんなこと言ってんでしょぉ~? 桃子にはぜ~んぶわかってるんだから!
桃子が受付嬢だって篠田さんが思ってくれたのなら、桃子が会社に認められるほどの可愛い女の子だって思ってもらえるよねっ。
でもホントは桃子、まだ総務課付きの新人社員なの。だから制服もまだ地味な内勤職用・・・。
とはいえ、将来的には我が社の綺麗どころが集められる受付嬢の部署を志願するつもりだから、嘘にはならないよね! あ、ちなみに桃子は大学時代、準ミスに選ばれたこともあるぐらいだから、選ばれる資格は充分ありありのはず★ 受付にいても違和感ありませ~ん!
受付のおネェ様方に「自分の仕事、ちゃんとしろ」って毎朝言われるから、仕方なく総務課にイン。
でも総務課にいたって、篠田さんに会えないんだも~ん。
そこで桃子は知恵を絞って、積極的に営業部のフロアへ行く用事を引き受けることにしました! これで面倒臭い小さな仕事もマメに引き受ける「できる桃子」もアピールできるから、一石ニトリ?ってとこです! えっへん!
いつもドキドキしながら営業フロアに行くけど、でも篠田さん、全然いないんだよねぇ。
日本酒課って地味なだけに隅っこの方にあるから様子を伺いにくいんだけど、いつも留守。
彼、日中は外回りの仕事が多いみたい。── ま、営業だからあったり前か。さっびしー!
どうしたら篠田さんに会えるんだろうって考えて、退社する時にキャッチするしかないって思って。
仕事終わりに、会社のロビーのソファーで待つんだけど、彼、残業も多いことが判明・・・(´・ω・`)。仕事熱心なのはいいけど、それじゃ身体がもたないんじゃないのかな?
いつも篠田さんが出てくるまで待てなくて帰ることが多かったんだけど、今夜はなんと終業後30分ぐらいで彼が降りてきた!
大チャーンス!
「篠田さん、お疲れ様ですー」
って声をかけたら、「あ、お疲れ様です」って返事をくれたんで、桃子はテーブルの上に広げた小物を慌ててバッグに突っ込んで後を追ったら、彼、背が高いから歩くのもはっやいの! うん、もうっ! 足が長いのも考えものだぞ! 激おこプンプン丸!
とはいえ、その日の篠田さんは随分急いでたみたい。
一生ケンメー彼の後をついていったら、オシャレなレストランの中に入って行っちゃったヾ(・ω・`;)ノぁゎゎ。
もうここは、着いて行くっきゃないでしょ!って思って、桃子もレストランに飛び込んだら、篠田さんは友達と待ち合わせをしてたみたい。
うーむ。さすがにいきなり合流って訳にもいかないか・・・。
ええい、これもイケメンをゲットするための必要経費。
「何名様ですか?」って訊かれたんで、桃子は勇気を振り絞って、「お一人様ですけど、なにかΣ(-_- )?!」って言い返してやりました!
お店の人にお願いして、篠田さんたちがよく見える席に案内してもらうと、メニューを見てビックリ!(◎_◎;)。この店、たっかーい!
正直、まだまだ社会人一年生の貧弱な桃子のお財布には痛い出費だったけど、仕方ない。
でも篠田さんがこんな高い店に出入りしてるってことは、篠田さんは結構いいサラリーを貰ってるってことだよね! 前途有望!
確かに高いだけあってメッチャうまいパスタ料理を食べながら篠田さんのテーブルの様子を伺うと、篠田さんの友達もメッチャメッチャイケメンだってことに気がついた。
すごーい! 類は友を呼ぶって、こういうことを言うんだよね!
篠田さんの友達は、篠田さんとはタイプが違ってたけど、超カッコいい♥ 正直、ちょっと気持ちがグラついちゃったけど、ダメだぞ、桃子! 浮気者は嫌われちゃうんだから。
二人はとっても仲良しさんみたいで、時折耳打ちをしながら楽しそうに会話をしてた。お店の中がちょっと騒がしいから耳を寄せていくんだろうけど、なんかそんな場面を見る度にこっちが何だか恥ずかしくなってきて、桃子思わずホッペが熱くなっちゃいました。なんでだろ( ? _ ? )。
イケメン同士が顔を寄せ合う絵面がこんなにも破壊力があるとは、桃子知らなかった・・・。恐ろしいわ、リアルイケメンって。
二人は食事を終えると、直ぐに席を立った。
いっけない! 食べかけのチョコレートケーキがメチャもったいなかったけど、ダーリンを見失う訳にはいかないのだー! うーん、桃子、大人になったなぁ。
慌てて支払いを終えて店を出ると、少し前を二人が歩いてた。
ダーリンは店に来る時とは違って、どこか足元が覚束ない感じだった。食事中、ワインを何杯か飲んでたから、きっと酔っぱらっちゃったんだね。篠田さんったら、お酒弱いんだ~。桃子なんか、あれくらい飲んだだけじゃ、ビクともしないよ。ま、過去には酔ったフリして狙った殿方をお持ち帰り・・・♥ なんてこともあったけど、篠田さんにはこの手は使えないのかぁ~・・・・。
・・・・・・・・。
はっ! そうかっ!!(゚Д゚))
桃子が篠田さんをゲロ酔いさせて、お持ち帰りすりゃいいんだっっっ!!!
桃子ったら、天才ぃぃぃ!!!! あったまいー!
とはいえ、今日はお友達がいるから、この作戦、今夜はつっかえませーん! ちょー残念!
時折よろめく篠田さんをお友達は微笑みを浮かべながら見つめ、腕を支えていた。
うーん、それにしても篠田さんのお友達って、ほんっとイケメン。イケメンというか・・・イケメンといより・・・美人って感じ? ・・・・男の人に美人っていうのは変か。でも、大学のミスコンで一位だったあのコンチクショーよりキレイなんだもん。あれ? ってことは桃子よりも・・・(´・ω・)。
・・・・・・・・。
ウソウソ、ウッソでーす!
世間では、男の人に美人だなんて言いませーん!
そうこうしてたら、二人はタクシーに乗ってしまった。
ヤッバーイ! 見失なっちゃうじゃない!
桃子も慌ててタクシーをゲット! 運転手さんに「あのタクシーを追ってくださいっ!」って言っちゃった♥ 桃子ったら、まるで探偵さんみたい(^_-)-☆
でもタクシーが停まって料金言われたら、またブルーになった(ー ー;)。探偵ごっこって、お金かかる・・・。
タクシーが停まったのは、月島だった。
九州から出てきた桃子にとっては、未開の地。かろうじて名前だけ知ってるところ。
てか、月島の風景ったら、メッチャ田舎じゃぁん!
アタシの実家のまわりだって、もっとオシャレですよ。
まさか、こんなところまで二次会しにきたんじゃないよ、ね?
篠田さんとお友達は揃ってタクシーを降りた。
適度な距離を置いてついていくと、お友達が篠田さんを支えたまま、ちょっと古めかしいマンションの中に入っていった。桃子、慌ててマンションの前にダッシュ! そのままエントランスに入れると思ったら、にっくきナンバーキーに阻まれちゃった・・・。
ちくしょう・・・(・д・)チッ。
はっ(゚Д゚))! 乙女がそんな汚い言葉を使ったらダメなんだぞ!
「きゃっ」って乙女のポーズを取っていたら、次に入ってきた別の住人に怪訝そうな顔つきでジロジロ見られたので、桃子は涙を飲んで退散!
あ~ん! 残念!
でも、ナンバーキーより手前の壁にあったポストに篠田さんの名前があったから、このマンションは篠田さんの自宅と確定しまーす。
結構古いマンションっぽいけど、エントランスとかまだキレイだったし、いいマンションだと思う。ってか、このマンション、分譲だよね? 賃貸って感じじゃないもの。ってことは、篠田さんは既に家持ちってことでしょ? 月島ってどこか磯臭くてダサいとこだけど、一応都心だし。
すっご~い! イケメンで優しい上に、背も高くて家持ちって、スペックたかーい!
やっぱ、桃子が目をつけただけはあるよねっ(^_-)-☆
ということで、本日の生態調査はしゅーりょー。
その後、篠田さんの仕事は忙しさを増して、桃子、帰宅時の篠田をキャッチできなくなってしまいました(´・ω・`)ショボーン。
だって、10時とか11時とかまで待ってられないんだもん。9時過ぎると、守衛さんに無理矢理ロビーから出て行けって言われちゃうんだもん(T ^ T)。
女子社員が集まる給湯室でも、篠田さんの忙しさは話題になっていた。なんでも、いろんな雑誌から取材依頼が来たり、経営不振の酒蔵からお声がかかったりと、新しい仕事が増えてるんだって。はっきり言って桃子は、日本酒課がそんなに忙しい課だって思ってなかったから、意外だった。だって、日本酒なんておじさんの飲むもので、ワインとかの方が売れてるでしょ? 実際、洋酒関連の課の方が人数多いし。
そんな素直な感想を言ったら、先輩女子社員の田中さんに怒られちゃった(´・ω・`)。
日本酒課は、他の課よりも生産者との繋がりを深くしていかないといけない課だから、他の課よりも手間がかかるんだって。だから篠田さん、出張が多いんだって知った。
イケメンな上に仕事も一生ケンメーな人だなんて、すごいなぁ。桃子、ソンケーしちゃいます。ますますキュンキュン♥
でも、もし桃子が篠田さんの恋人になっちゃったら、こんなに仕事が忙しくて放っておかれると耐えられないかも。桃子が恋人になった暁には、社長にダーリンの仕事を減らしてくださいって言わなきゃ!
その日もダメ元で篠田さんがロビーに降りてくるのを待ってたの。
昨夜は遅くまで篠田さんとのバラ色の新婚生活を妄想してたら眠れなくなって、寝付いたのが3時頃だったから、もう眠たくて眠たくて、ロビーのソファーでうたた寝をしていたら、「おぉ、シノ、お疲れさん!」って声が聞こえて、パッと目が覚めた。
この大きな声は、日本酒課の手島さんだ。
世情に疎い桃子だって、手島さんのことは知ってる。
同じ日本酒課所属でも篠田さんとは正反対のちゃらんぽらんな営業さんだ。
この人は、朝、何食わぬ顔で受付に座る桃子を見て、「なんで桃太郎が受付嬢って顔してそこに座ってやがるんだ」って爆笑する。それも毎朝だよ! これこそ激おこプンプン丸です!
そんな印象最悪な手島さんと篠田さんが一緒の課だってことが信じられないけど、実際そうなんだから仕方ない。
顔を上げると、「明日の休みはしっかりと休むんだぞ」と手島さんがそう言って、篠田さんの頭をワシワシと掴んでいた。篠田さんは嫌がる風もなく、笑いながら「そうします」と答えている。
久々のダーリンの笑顔に、桃子は再びキュンキュン♥
篠田さんって、イケメンのくせにそれを自慢する訳でもなく、基本「いい人」だよねー、ホント。
桃子、篠田さんの姿に見とれいてたら、声をかけるタイミングを逃しちゃった。いっけない! てへっ!
慌てて後を追いかける。
今日はまっすぐお家に帰るみたいで、桃子も後をついていった。
地下鉄とかに乗ると、篠田さんの格好よさが際立つよねー。
だって、背が高いから他のお客さんより頭一つ飛び出してるし、篠田さんは姿勢がいいから、更に目立つの。それに爽やかで端正な顔をしてるから、今だって周囲の人達の熱い視線を一身に浴びてる。でも篠田さんはそんな視線に気づく素振りもなく、吊り革に捕まって窓の外を眺めてた。地下鉄なのに。なにか考え事でもしてるのかな? それともちょっと鈍感な人なのか。
桃子は思い切って声をかけることにしたの。
だって、こんなチャンスまたとないでしょ?
人の間を縫うようにして篠田さんの隣に滑り込むと、「し、篠田さん」と声をかけた。
すると篠田さんは、キョロキョロと辺りを探すような表情をした。
え─────!? 篠田さん、桃子のことが見えないのぉ!
「篠田さん、下ですっ! 下!」
桃子が慌てて言うと、篠田さんが下を向いた。
「あ、ご、ごめん。君か」
いやぁ~ん! 篠田さん、覚えててくれたんですねぇ!
「ええと・・・、確か・・・桃太郎!・・・さん」
(´◎ □ ◎`)
桃子が固まったのを見て、篠田さんは焦った声でこう続けた。
「い、いや、その、皆がそう呼んでたからさ、思わず・・・」
そりゃ、総務課の堅物課長までもそう呼んでくるけどさ・・・。
「嫌ならもうそうは呼ばないけど。でも、桃太郎って可愛いアダ名だよね。ほっぺたが赤いところがいかにも桃太郎って感じで」
「か、可愛いですかっ?! アタシ!」
桃子が希望を見出して詰め寄ると、篠田さんは少し身体を反らせながら、「う、うん、可愛いと思うよ、そのアダ名」と言ってくれた!
やっぱ、篠田さんの目は節穴じゃないのねぇ♥♥♥ よかった♥
周囲の女子達も、桃子と篠田さんが知り合いだとわかって、悔しそうな、残念そうな、物欲しそうな顔付きをした。えっへん!
「この電車に乗ってるってことは、お家、こっちの方向なのかい?」
篠田さんがそう訊くので、桃子は曖昧にうんと頷いた。── だって本当は正反対の方向だもん・・・(´・ω・`)。
でもさすがに、篠田さんについてきたって言うわけにもいかないじゃない? ストーカーと勘違いされたら大変だし。
「俺は月島に住んでるんだ」
そう言う篠田さんに、桃子は「へぇ、そうなんですかぁ」と答えた。本当は自宅がどこかもう知ってるけど。
そうこうしてたらあっという間に月島に着いちゃって、「じゃ、俺、この駅だから。お疲れ様」と言って、篠田さんは電車を降りて行っちゃった・・・。
なんだか一緒に降りれる雰囲気でもなかったから、桃子はそのままドアの向こうに篠田さんの背中を見送ってしまった。
・・・・・。
なんだか、悲しいナリ・・・(´・ω・`)。
おバカさんな桃子。このままじゃ、篠田さんに全然気持ちが伝わらないじゃない!
桃子、決めました!
今夜、桃子は篠田さんにこの想いを伝えまぁす!
桃子は次の駅で降りると、また月島に取って返して、篠田さんのマンションを目指した。
前は車でだったから、篠田さんのマンションまで辿り着くのに、案外時間が経ってしまったヾ(・ω・`;)ノ
えっとえっと・・・、篠田さんのお部屋番号はぁ・・・。
ポストとナンバーキーの間を行ったり来たりして桃子がモタモタしていたら、突然エレベーターが一階に着く音がして、背の高い男の人が桃子の肩にドンとぶつかってきたの。
「あ! ごめん、大丈夫?」
床に尻餅をついた桃子を起こしてくれたのは、篠田さんのお友達だった。
わぁ、間近で見ると、ますますびっじーん!
美人の迫力に押されて桃子が口をパクパクさせてると、「どこか痛いところはない?」と訊かれて、桃子は無意識に首を横にブンブンと振った。だって、実際ぼーっとしてて、よくわかんなかったし。
お友達は、「そう」とそっけなく言うと、本来の目的を思い出したのか、マンションを飛び出して行った。
私も思わず、マンションのエントランスを出て、お友達が走り出て行った後を見つめた。
お友達は、大通りの方に姿を消して行っちゃった・・・。
なんか機嫌悪そうだったけど、篠田さんとケンカでもしたのかなぁ。ってか、あの人、今日も篠田さんの家にいたの? あ、ひょっとして、篠田さんのポストにもう一つ「成澤」って名前も書いてあったけど、あの人が成澤さんなわけ? あ、そっかそっか。今流行りのシェアハウスってやつね。
妙に桃子が納得してると、今度は篠田さんがマンションを飛び出してきた!
とっさに「あっ!」と桃子が声をかけたけど、篠田さんはまったく気付かない様子で道路に飛び出し、周囲を見回した。また篠田さん、桃子のことが視界に入ってないよねー(´・ω・`)。
篠田さんはスーツ姿のままで、明らかにお友達さんの行方を捜してるように見えたから、思わず「あっちの大通りに行きましたよ!」と声をかけると、初めて篠田さんは桃子のことを見た。篠田さんは一瞬「なんで?」って顔付きをしたけど、アタシが指差してる方向を見ると、「ありがとう!」と言って追いかけて行った。
その場に桃子だけが取り残されて、ぼーっとしてしまう。
えっとぉー、アタシ、なんでここにいるんだっけ(-ω- ?)。
あっそうか! 篠田さんにコクるつもりだったんだ!
たっいへーん!
「篠田さぁ~~ん!」
桃子も慌てて篠田さんを追いかける。
大通りに出ると、まだ篠田さんはそこにいた。
桃子、ちょーラッキー!
と思っていたら、またまた篠田さんがタクシーを捕まえて乗って行っちゃった! うわ~ん( ;`ω´) (`ω´;(`ω´; )!
「へい! タクシー!」
桃子は道路に飛び出して、クラクションを鳴らされながらも何とかタクシーを捕まえる。
「オヤジ! あのタクシー、追ってくれ!!!」
片手に札束を握りしめて桃子が後部座席から身を乗り出すと、タクシーの運ちゃんがビックリした顔をして「は、はい!」と思い切りアクセルを踏んだ。
何だかよくわかんないけど、桃子、今、最高に輝いてる!!!
篠田さんはあちらこちらのクラブを巡ってるようだった。
でもきっとそこにはお友達はいなくて、またタクシーに乗り込むということを繰り返していた。
「お客さん、あの人、スターか何かかね?」
ふいに運ちゃんがそう訊いてくる。
「え?」
桃子が訊き返すと、「いや、あの人、今流行りの俳優さんか何かかね? お嬢さん、あの人のファンなんだろ」と言ってくる。
「時々乗せるんだよ。ジャニーズの追っかけしてる女の子とか。お嬢さんもその類いだろ」
桃子は追っかけなんかじゃなかったから「違う」って言ってみたけど、「別に隠さなくったっていい。あれだけの色男なんだ。追っかけたくなる気持ちもわかるわ」と返してきた。
あーん、桃子、篠田さんの追っかけとは違うのにぃー! 未来のステディなのにぃー!
そう言おうとした矢先、篠田さんが再び乗り込んだタクシーが動き始めたから、こっちのタクシーも動き始め、アタシは言葉を飲み込んだ。
結局、篠田さんがタクシーを降りたのは、六本木にあるクラブの前だった。
一旦クラブの中の様子を伺いに行った篠田さんは、再び帰ってくると、今度はタクシーの窓の外から支払いをし始めた。
きっとお友達を見つけたんだ!
桃子も慌てて支払いを済ませる。
わーん、探偵ごっこって、どうしてこうお金がかかるのぉ~( ;´Д`)。
篠田さんがお店の中に入って行くのを見てから、桃子もお店の中に入った。
中はよくあるクラブだった。
大音量の音楽と、カウンターバー。向こうの暗がりにはボックス席。
一応桃子だって学生時代にクラブで遊んだこともあるから、全然知らないって感じじゃない。自分の知ってる世界でちょっとホッとしたけど、なぜだかここは篠田さんには似合わない世界だなって思った。
カウンターバーの端っこから中を見渡した。
お店の中は週末とあって凄く混み合ってたけど、篠田さんのことはすぐ見つけられた。
愛の力ね!
でもやっぱり、桃子が想像していた通り、篠田さんとお友達・・・成澤さんは何か言い争っていた。
二人の周りを取り囲む人達も興味深げに二人の言い争いを聞いているようで、やがてそのことに篠田さんが気付いた。
篠田さんが成澤さんの腕を掴んで周囲を見回すと、トイレの方向に成澤さんを引っ張って行った。
当然桃子もついていきます!
トイレに続く通路に出ると、そこに二人の姿は見えなかった。
うーん、男子トイレに入っちゃったのかなぁと思ったけど、トイレ前の通路も人でいっぱいで、ここで二人が落ち着いて話せる雰囲気でもなかった。
それでもさり気なく男子トイレの前を通り過ぎ、耳を澄ませたけど、篠田さんの声は聞こえなかった。
あーん、どこに行っちゃったんだろう・・・。確かにこっちに来たのにぃ。
そう思いながらトイレを通り過ぎ、さらに奥に足を進めると、通路の角を曲がった先に人の気配がした。
まさかと思って角から覗き込むと、更に奥に続く通路の途中で向かいあっている二人の姿を見つけました───!
どうも通路の先はスタッフオンリーの部屋があるだけのようで、さすがにここまでは誰もこないし、フロアの大音量も小さく聞こえてくるだけ。
桃子、聞き耳を立ててみたけど、声が時折聞こえてくるのに、何を話してるかまではわからない。
でも、二人の雰囲気が険悪なのは間違いないって感じ。だって今、成澤さんが篠田さんの胸元を両手でドンって突き飛ばして ── といっても軽くだけど・・・── 突き飛ばされた篠田さんの背中が壁にぶつかった。成澤さんの表情は見えないけど、篠田さんの顔は天井の小さなライトに照らされてよく見える。唇を噛み締めて、悔しそうな顔付きをしてた。
ああ、でも、そんな顔も萌えるなぁ。なんでも一生ケンメーな篠田さんの表情は萌える。── なぁんて桃子が思ってたら。
なななななななななんと!
な、成澤さんが、篠田さんにき、き、き、キッスを!!!!!
え!? え? え? えっとえっと、今の、見間違いじゃないよね?
ヘ(゚∀゚ヘ)アヒャ
そう思ってたら、ポカンとした顔の篠田さんに、また成澤さんが唇を押し付けていった。今度はさっきより長くて、なんというか・・・強烈そうだった。
最初抵抗していた篠田さんの身体からみるみる力が抜けていって、最終的には成澤さんの背中に腕を回していた。
ええとぉーこれってーつまりー・・・、どうゆうこと(゚ー゚*?)オヨ?
なんだか事態が飲み込めずにいる桃子の前で、状況はどんどん進行していく。
あっという間に篠田さんは身体の向きをひっくり返されて、成澤さんに後ろから抱きすくめられていた。
恐ろしいことに、成澤さんは篠田さんより背が高かったから、あの篠田さんをすっぽり抱きしめている。
巨人だ、巨人。進撃の巨人。
だなんて桃子がバカなことを考えていたら、成澤さんの右腕が動いて、どんどん下に下がって行く。
そしたら突然、篠田さんの身体がビクリって跳ね上がって、篠田さんの手が成澤さんの腕を掴んだ。
それでもそんなことおかまいなしって感じで、成澤さんの手が篠田さんの服を寛がせているのが見えた。
ええとぉーこれってまさかー、エッチしようとしてる? ここで?
└(゚□゚)」オーマイガ!
桃子は、天にまします我が母に祈った。
── ママン、どうやら桃子は、失恋しちゃったみたい・・・。クスン。
私の未来の旦那様には、男の恋人がいらっしゃったの・・・。しかも、飛び切り美人な(-。-;
「・・・ぁ・・・」
廊下の向こうから、熱く掠れた篠田さんの声が聞こえて、思わず視線を戻す。
桃子、思わずガン見しちゃった♥
篠田さん、最初は抵抗してたけど、さっきのキスの時と同じで、今は壁に縋り付いてされるがままになってる。
成澤さんに何をされてるかは正直篠田さんのジャケットの向こうに隠れて見えなかったけど、際どいところを触られてるんだなぁってことは、横顔を見てたらなんとなくわかった。
やだー、篠田さんって、エッチモードになると可愛さ全開になるのねぇ。ってか、篠田さんが「される方」っていうのが正直意外だったけど。だって身体の分厚さで言えば、断然篠田さんの方がガッシリしてるし。
男の同士の世界って、奥が深いのねぇだなんて思っちゃった。
そしたら、桃子の後ろから突然チャラ男とチャラ子の笑い声が聞こえた。
振り返ると、明かにベロベロに酔っぱらった頭の悪そうなカップルがこっちに向かってやってくる!
や、ヤッバーイ!
ここは何としても通すわけにはいかない!
二人の愛の営みを、何人たりとも妨害してはならぬ。
ならぬものは、ならぬのです!(。+・`д・。)キラーン
「こ、こっから先は、スタッフオンリーです!」
アタシは、両手を広げてカップルの行く手を阻んだ。
チャラ男が桃子を頭の先から足の先まで眺めて、首をかしげる。
ま、確かに桃子の格好はスタッフっぽくないけど!
ここは押し切るしかない。相手は頭の悪い酔っぱらい! 桃子、ガンバなのです!!
「スタッフしか行っちゃダメなんです!」
「ええとぉ・・・」
「トイレなら、あっちです! あっち、あっち」
桃子が二人の身体の向きを変えて背中を押すと、チャラ男とチャラ子は「トイレあっちだってぇ」と笑いながら去っていった・・・。
桃子、やりましたー! なんだかとっても、偉業を成し遂げた気分。
汚れた世界から、聖なる恋人達を守り抜いた気分ですー!
額に浮かんだ汗を拭って元の位置まで取って返すと、「ぁああっ!」と切なげな声が聞こえてきて、篠田さんがゼーゼーと肩で息しているのが見えた。
そしたら成澤さんが篠田さんの腰のポケットからハンカチを取り出して、またジャケットの向こう側に手を差し込んだ。その間も篠田さんは壁に縋り付いたまま、乱れた呼吸を整えていた。
その目尻の下を紅く染めた横顔がとっても美しくて・・・・♥
篠田さんって、エッチが終わると美しく神化するのねぇ・・・・。
成澤さんが甲斐甲斐しく篠田さんの乱れた服を元に戻すと、正気に戻った篠田さんは振り返りざま拳で成澤さんの胸元をドンって殴った。「こんなところで、あんなことしやがって!」って感じで。
またケンカが再燃するかなぁと思ったら、明らかに成澤さんが笑って、篠田さんの拳をそっと掴むと、その手にキスをしたの。本当に大切なものを扱うみたいに。
── それはまさに、王子様のキス。
桃子、失恋したってのに、思わずうっとりしちゃった♥
篠田さんもそのキスにきゅんときちゃったのか、表情を和らげて成澤さんの髪を指ですいた。
あぁん! 相思相愛! 完璧な美!
羨ましいですぅ♪───O(≧∇≦)O────♪
結局仲直りした二人は、その後ぎゅっと抱き締めあったのでした。
めでたし、めでたし。
二人を置いて先に店を後にすることにしたアタシ。
クラブで支払いをして ── 何も飲んだり食べたりしてないのに、入場料だけはしっかり取られた ── 外に出ると、夜の風も冷たくて、桃子のお財布もつめたぁーくなってた(´・ω・`)ショボーン。
今夜はいろいろ人生を学ばせてもらったような気がするけど、勉強料もとってもかかっちゃいました_| ̄|○
桃子はおもむろに携帯をバッグから取り出すと、実家に電話をかけた。
「── あ、おかぁちゃん? アタシ、アタシ。桃子よ。元気にしとっと? そうね。あぁ、ちょっと頼みがあると。そう。今月、少しばかり仕送り送ってもらえんね。え──! おかぁちゃんは桃子が都会で飢え死にしてもよかとー?・・・」
え? なんですって?
お前のオカンは死んでないのかって?
そんなの、あの時の気分で出た妄想(*´∇`)ゞデシ!
じゃ、皆、またね~~~!(^o^)/ 古賀桃子でしたー!
here comes the sun 新入社員 桃子のドキドキ篠田さん観察日記 end.
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編集後記
なんか、ipadって・・・
アホな文章がお気軽に書けますね(大笑)。
い、いや・・・それは国沢だけかもしれませんが・・・。
「定期更新はしばらく休む」宣言をしたんですけど、ブログを含め、こんなにツラツラとアホなテキスト書いてる国沢って・・・頭大丈夫かなぁ???(゚ー゚*?)オヨ?
いや、本当はサイトの模様替えしないといけないんだけど・・・。
今の技術にあわせて、替えなきゃならない状況においこまれてるんだけど・・・(脂汗)。
リンクページも切れてばっかだし・・・、ランキングは荒れまくってるし・・・(大汗)。
でも、ついついアホなテキスト、書いちゃいました! あはっ!
ってか、このツッコミどころ満載キャラの桃子・・・。最初は書いていて相当気持ち悪かったんですけど、最後には桃子と友情が芽生えた気分になりました(笑)。桃子の母がピンピン生きてるって判明する前まで(笑笑)。
しかし、加寿宮の人事さん、どうしてこんな子を採用したんですかね???
国沢も訊いてみたいです・・・。
[国沢]
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