act.71
<side-CHIHARU>
僕が目を覚ましたのは、11時過ぎのことだった。
朝方柿谷から帰ってきて、そのまま勢いでシノさんと「ただいまセックス」をして、お風呂から出てくる頃には空が白みかけてたから、まぁ仕方ないといえば仕方ない。
隣を見ると、シノさんの姿はなく。
シノさんは普通の時間に寝始めたはずだから、当然と言えば当然か。
── ああ、朝したセックスのせいで、身体が重い・・・。ついでになんか頭も重い・・・。ちょっと寝たりない感じだなぁ・・・。
しばらく布団の上に座ったまま、ぼーっとしてしまう。
まるで昔の僕だ。
夜遊びに明け暮れていた頃の僕は、毎朝こんな感じだった。
学校へもよく午後から登校していたし。
思えば、酷い学生生活をしていた。よく卒業できたな、とつくづく思う。
僕が起きた気配を感じて、寝室の引き戸が開いた。
「千春、おはよう・・・」
最初笑顔だったシノさんの表情が、すぐに強ばったものに変わる。
「・・・千春、なんか、寝起き、怖い」
「よく言われます」
ブスッとしたままの僕は、髪の毛を掻き上げながら即答した。
これまではシノさんより僕が早く起きることがほとんどだったから、寝不足気味の僕の寝起きにシノさんが遭遇するのは多分初めてなんじゃないかな。
僕はゆっくりと瞬きをしながら、「シノさん・・・朝、ちゃんと食べた?」と訊く。
「うん。食パン焼いて食べたよ」
「・・・そうですか」
僕は再度髪を掻き上げながら、外の陽の光の眩しさに顔をしかめつつ、窓の方に視線をやった。
「あぁ、シノさん・・・。洗濯物、干してくれたんですね」
「うん。朝起きたら、丁度ピーピーって洗濯機が鳴ってたから」
「・・・ま、干し方は何ですけど。一先ず合格」
「あ、ありがとうございます」
僕はハァと溜め息を零すと、ダラッと布団の上に寝っころがった。
「ああ、身体がだるい・・・」
シノさんが僕の傍らに座る。
「夕べ徹夜して車運転したからじゃないのか?」
シノさんはそう言いながら、僕の髪の毛を撫でてくれる。
「まぁ、それもありますけど。でも直接の原因は、今朝シノさんが一回で僕を放してくれなかったからかなぁ~」
投げやりな言い方で僕がそう言うと、たちまちシノさんは顔を赤くした。
「ご、ごめん」
僕はゴロリと身体を反転させ、シノさんを見上げる。
「別に謝らなくてもいいですよ。二回目したいって言ったシノさんにホイホイ同調したのは他でもない僕ですからね。自業自得です。ああ、でも、お昼作るのが面倒くさい・・・」
僕はフワァと欠伸をする。
「じゃぁ、昼飯は外で食べる? 久しぶりにもんじゃとかどう?」
お、もんじゃか。
あれはオヤツみたいなものだけど、まぁこんな日には丁度いいか。
「いいですね。そうしましょう」
僕はヨッとかけ声を上げて、立ち上がった。
いつも買い物に行く商店街を抜けたところに、シノさんの馴染みのもんじゃ焼き屋さんがある。
シノさんとこう言う関係になる前は、実は僕は下町の店に余り馴染みがなかった。せいぜい、祖母に連れられて行った喫茶店ぐらいのものだ。
毎日ほぼ月島を出て外の世界で遊んでいた僕が月島の魅力に気がついたのは、大人になって随分後のことだ。
もんじゃ焼きのお店に入ると、近所の子どもでいっぱいだった。それに混じってチラホラと家族連れがいる。
シノさんがお店のご主人に軽く挨拶をすると、店の備品置き場になっていた一番奥のテーブルをキレイに片付けてくれて、そこに座れと手で案内された。
出されたお冷やを飲む頃には、やっと僕の頭の回りを取り囲んでいた靄が晴れ始める。
「何だかやっと目が覚めてきました」
「そう? よかった」
店の人がテーブルにもんじゃのタネを置いていく。
それをシノさんが慣れた手つきで中身を鉄板の上に空けた。
実は、料理がからきしダメなシノさんだけど、もんじゃ焼きとお好み焼きだけはいつもこうしてシノさんが焼いてくれる。
兄妹二人でここに引っ越してきてからは、よく食べにきていたそうだ。
もんじゃは安いから、兄妹が唯一できる外食だったんだって。
なので、もんじゃ焼きとお好み焼きに関しては、シノさんの方が僕より焼くのが上手い。
シノさんがもんじゃを仕上げていく様子をぼんやり眺めるのも、オツなものだよね・・・なんて思っていたら、僕の携帯が鳴った。画面を見ると、岡崎さん。
「あー、なんだろう・・・」
またもや不機嫌になる僕に、シノさんは「早く出た方がいいんじゃないの?」と言ってくれた。
僕は壁の方に身体を向け、電話に出る。
「はい。どうしました?」
『せっかくのお休みの日に、ごめんねぇ』
岡崎さんの言う「お休みの日」とは、僕の休みの日を指すのではなく、シノさんの休みの日を指す。
僕は所謂フリーランスの仕事形態なので、はっきりとした休みの日がない。それは出版業界も同じようなもので、彼らは常に世の中のタイミングを計って仕事を進めて行くところがあるから、土日も会社は開いているし、動いている。社員はそれぞれ交代で休みの日をズラしているのだ。今日は岡崎さんが土日出てくるシフトになっていたんだろう。
岡崎さんは、僕があからさまに不機嫌な声で出たものだから、そのことで僕がシノさんと過ごしていることを察したようだ。
彼女は、再度電話口で『ごめん、ごめん』と謝った後、続けてこう切り出した。
『小出さんの写真集、発売日決定したから』
それは、写真週刊誌騒動で一旦出版が延期になっていた小出さんの写真集・・・正確に言えば、僕のヌード写真をまとめた小出さんの作品集のことだ。
「 ── すっかり存在を忘れてた・・・」
僕は思わずそう呟く。岡崎さんに、『あら、大事な撮影料の肩代わりなんだから、忘れちゃだめよ』と怒られる。
「そうでした。すみません」
僕は素直に謝る。
だって、写真集の出版は、シノさんの写真を小出さんに撮ってもらう交換条件だったからだ。
「で? いつ出るんです?」
『クリスマスイブ』
そう言われて、僕はブッと吹き出した。
シノさんが怪訝そうに僕を見る。
「随分急な話じゃないですか? なんだってそんな日に・・・。第一、広報間に合うんですか?」
僕がそう捲し立てると、岡崎さんはホッホッホッと余裕の笑い声を上げた。
『だって、発売延期になった時点でもう刷っちゃってたんだから、後は出荷するだけだもの。広報はそんなにしなくても全部売れるわよ。あの内容なら』
岡崎さんがそう言うのなら、そうなんだろう。なんだかんだ言って、岡崎女史の営業手腕は優れたものだ。
── しかし、ヌード写真をクリスマスイブにだなんて・・・。
イベントを絡ませたいのはわかるけど、イブにわざわざ男の裸の写真を買う人達がどれほどいるんだろう?
まぁ多分、購買層は女性の方が多いだろうが、彼氏と過ごす夜に他の男の裸の写真を買うなんて、僕が彼氏ならちょっと引いてしまうような気がするが。
『うちの控え分はきちんと確保するから、あなたにも数冊回すようにするわね』
「いや、一冊で充分ですから」
僕はそう答えて電話を切った。
思わず項垂れて、はぁと長い溜め息を吐いてしまう。
シノさんはすっかりでき上がったもんじゃを小さなヘラでこそぎながら、「岡崎さん、なんて?」と訊いてきた。
「小出さんの写真集、発売するんですって」
シノさんが「ああ」と目を大きく開く。
「ようやく発売だね」
シノさんはいたって嬉しそう。
「嬉しそうですね」
僕が口を尖らせてそう言うと、逆にシノさんに「嬉しくないの?」と訊き返された。
僕は右目の目頭付近を指で擦りながら、「まったく嬉しくないわけじゃないですけど・・・。やはり少しバツが悪いですよ。自分の裸の写真集をクリスマスイブに発売されたら」と答えた。
「え! イブに出るの?」
「だ、そうです。 ── これじゃ、イブの日は恥ずかしくて出かけられないじゃないか・・・」
僕は両手で顔を覆う。
「でも、小出さんの写真は芸術的だし、そんなに恥ずかしいものじゃないよ。凄くキレイな写真だし」
そう言うシノさんを、僕はギロリと睨んだ。
「 ── その芸術的な写真を見て興奮したのは、どこのどいつでしたっけね?」
「あ」
たちまちシノさんは顔を真っ赤にして、身を竦ませる。
クリスマスイブはシノさんがバリバリ働いているだろうから、また陣中見舞いに行こうかと思ってたのに・・・。
ハァとまた溜め息を吐く僕の手にシノさんはコテを握らせると、
「ま、取り敢えず今は食べようよ」
と言ったのだった。
昼食を終え、帰りの商店街で不足している食材を買って帰る頃には、僕は頭も身体も完全に目が覚めた。
やっぱり週の献立を考えながら買い物をしていくと、頭が冴えてくる。
食事を作るのは一週間流れが繋がっていて、そこをお買い得な食材でうまく回していくために思案するのは、パズルのピースをはめ込むような感覚だ。凄く理数的な頭の使い方をする。そこが面白い。
今でこそ物書きをしている僕だが、元々『理数脳』な僕には、やはり適しているのだと思う。
更にシノさんと買い物をしていて面白いのは、僕が食材を手に取る度にシノさんが「それはどうするの?」と訊いてくることだ。
シノさん、まるで子どもみたいな好奇心旺盛 ── というか、探求心旺盛なんだから。
普通なら鬱陶しく感じるところだが、豆芝みたいに可愛い表情で訊いてくるものだから、僕としては可愛くって仕方がない。
僕が使う料理やその食材に合うお酒のことなんかを話してあげると、「へぇ~」と素直に感心して、明らかに心の中のメモ帳にバリバリメモしているのが窺える。
世の中にはプライドというものが邪魔をして、「年下からものを教わるなんて」と考える男はたくさんいるが、はっきりいって僕からすると、とても愚かなことだと思う。教わることを諦めてしまった段階で、その人の成長はそこで終わり。見識が広がらない=その人自身の度量も広がらない。僕はそう思っている。
僕は文壇でもほぼ末っ子のような扱いを受けているので、僕のことを毛群がる年上の作家なんて五万といる。大抵は男性作家が僕に対してそういう態度を取るが、そういう作家達は言っちゃなんだけど、僕の本の売り上げを超えてくることはない。
その点、シノさんみたいな年齢に関係なく、素直に探究心を満たそうとする人はやはり強いと思う。
僕の知っている中じゃ、長田計子がそのトップだ。
以前、僕に無理矢理シャンパンタワーを注がせたオバさん・・・いやもうおばあちゃんだ。
流潮社の重鎮である彼女は、ああ見えて物凄く分け隔てがない人だ。
化粧臭いおばぁちゃんであることは間違いないが、「知る」という欲望に関しては、底なし沼。
新聞記者より粘着質な取材をして、小説を書き上げる。
そのため、女性作家にしては無骨でリアルな社会派の小説を書く。
僕が初めて彼女に会った時も、お付きの人が躊躇うほど、僕にゲイの価値観や生活のこと、そして僕の生い立ちについて根掘り葉掘り聞いて行った。その時は、えらく不躾なオバちゃんだなぁと思ったものだが、長田計子の質問に全て隠し立てすることなく答えたことを今にして思うと、僕はそういう人が嫌いじゃないらしい。
だからシノさんが「恋愛について教えてほしい」と年上ながらも素直な気持ちで僕のところにやってきたからこそ、僕はシノさんに惹かれたのかもしれない。
シノさんは今、キャラバンの取材記事を担当しているから、きっとそれに僕から得た情報を活かしたいんだろう。
この人の一生懸命さに触れると、僕はいつもほっこりしてしまう。
ああ、シノさんを好きになってよかった。この人に好きになってもらってよかったって思う瞬間だ。
部屋に帰ると、僕は年末にむけての引っ越しの準備をすべく、シノさんの部屋を片付けることにした。
まずは元寝室だった部屋にある普段余り使ってないパソコンを段ボール箱に入れた。これは一応新居に持って行く予定だけど、あまり使わないようだったら中身を整理して処分してやると僕が目を付けているやつだ。パソコンラックは、リサイクルに出して・・・と。本棚の中の本は、シノさんにいるものといらないものに分けてもらわなくては。
その後は、押し入れの中にあった明らかに不要そうな物をまとめて、ゴミ袋に入れるなり、紐で縛る。そのタイミングで、寝室の方からシノさんの高笑いが聞こえてきた。
── むむ、どうやら録画したバラエティー番組を見てるな。
玄関先にゴミ袋を運んで、洗面所を覗く。
ここのものはほぼ毎日使うから、荷造りがまだできない。洗面所下のクローゼットは掃除道具が入ってるし、タオルも歯ブラシも洗剤もまだ使う・・・。洗濯機は、引っ越す前にこちらもリサイクルショップに出すことにしている。ここの片付けは、引っ越す前日になりそうだ・・・。と、ここでまたシノさんの高笑い。
台所は、売っぱらう物と持って行くものに分け、その中ですぐに使わなそうな鍋や食器を新聞で包んで、おのおの段ボール箱に入れた。食器は新居のイメージに合うものだけ持って行くつもりだ。ほとんど僕の仕事場にあるものでことが足りるので、シノさんの家にある食器はほとんどがリサイクルショップ行きだ。
台所が終わると、今度は寝室の押し入れ。
今の季節に着ない服をどんどん段ボールに詰める。
シノさんのワードローブは、僕と付き合い始めた頃に大分整理をしていたので、この段階で捨てるものはない。
段ボールの蓋を閉めて、マジックで『シノさん 夏服』と書く背後で、またまた賑やかなテレビの音に混じるシノさんの高笑い。
「ねぇシノさん、一応僕がわかる範囲の荷物はまとめたけど、この先はシノさんじゃないとわからないから、引っ越す日までにちゃんと仕分けしておいてよ」
僕は段ボールを部屋の片隅に積み上げながらそう声をかけたが、シノさんからは「う~ん」という生返事しか返ってこない。
クリスマス商戦前の休日だからゆっくりしたい気持ちもわかるし、させてあげたいけどさ、僕も。
でもマンションリフォームの進行具合からいって、引っ越しが年末にかかりそうな雰囲気なんだ。
となると、クリスマスから年末、シノさんが死ぬ程忙しくなる前にある程度の準備はしておかないと。
また聞こえてくるシノさんに高笑いに、僕は肩越しにチラリと後ろを見た。
お昼にもんじゃ焼きを食べた後、午後のぽかぽかとした温かい日差しの中でまったりと好きなバラエティー番組(といっても録画したやつだけど)を見るというのは、彼にとってかなり贅沢な時間なんだろう。
今シノさんは、座椅子にゆったりと腰をかけ、胸の前には甥っ子のハル君が忘れて行った大きなドナルドダックのぬいぐるみを抱いた格好で、テレビを見ながら笑っている。
そのシノさんがテレビを見たまま、側のお盆に置いてある湯のみを手にし、何の躊躇いもなくそれを飲んだ。
「あ~~~~、シノさん、また僕の湯のみからお茶飲んでる」
「ん?」
やっとシノさんが僕を見た。
「湯のみ。それ、僕のでしょ。形が全然違うのに、どうして間違えちゃうかな」
僕にそう言われて、シノさんは今まさに気がついたといった顔つきで自分の手元を見る。
「あ! ホントだ、ごめん」
僕の湯のみは六角形で、シノさんの湯のみは丸い。明らかに手で触った感じが違うはずなのに、シノさんったら、手近にあったものからすぐ飲んでしまうんだ。湯のみならまだマシだが、ペットボトルでもこれをやるから始末が悪い。結局最後はどっちのものでもなくなって、2本のボトルを2人で分け合って飲むことになったりする(味が違っても、だ)。僕は若干潔癖なところもあるから本当はちゃんと分けて飲みたいのに、気づくと既にシノさんの襲来を受けていることがほとんどで、結局僕が敗北する。
僕はオーバーに溜め息をついた。
「シノさんって本当にA型なのかどうか疑わしいですよね」
僕がそう言うと、シノさんは口を尖らせて、「千春もB型にしちゃ、凄く几帳面だよな」とやり返してくる。
「大雑把過ぎるよりマシです」
僕がそう噛み付くと、シノさんはペコリと小さく頭だけで折って、「すんません」と謝る。
── ~~~~~。そうやって拗ねる顔もメチャメチャかわいいから、余計に腹が立つんですけどね(自分に)。
でもこうしてシノさんに噛み付く僕でも、シノさんが仕事に関してはかなりA型気質であることはわかっている。
責任感が非常に強いし、仕事の段取りを事細かに詰めて行くような仕事の仕方をする。所謂完璧主義ってやつだ。
それだけに自分で自分の仕事を増やしていくタイプだし、やり始めたら滅多なことでは諦めたりしない。粘り強いし、根気がある。 ── 僕には到底できない働き方だ。
だからこそ、オフの時はスイッチが完全に切れて自堕落人間になるのだろうけど、もう少し私生活でもちゃんとしてくれたらいいのになって思う。
ゴミ袋やいらなくなった雑誌の束を玄関先にまで運んでリビングに取って返すと、丁度またシノさんが高笑いしているところだった。
「アッハハハハ」
かなり特徴ある笑い方だけど、その屈託のない笑い方が僕にとってはツボだ。シノさんがこの笑い方をしてくれるだけでかなり幸せな気分になる。
でもなんだか今日は、ちょっとしゃくに障ってしまった。
久しぶりにゆっくりと二人で過ごせる休日なのに、テレビにどっぷりってどうなの?
柿谷で「連載小説書く」宣言をしてからというもの、僕一人で頻繁に柿谷に取材に行くことも増え、平日だって一緒にいられない日が増えたっていうのに。
僕はテレビ番組というものに余り興味がないから、益々退屈に思ってしまう。
── よーし、ここはひとつ。
僕は押し入れの扉を閉め、おもむろにシノさんに近づくと、「ハイハイ、ちょっと前に詰めて詰めて」とシノさんを座椅子から起こした。
「んん?」
怪訝そうにこちらを振り返るシノさんに、「シノさん、テレビテレビ」と頭を掴んで前を向かせる。
僕は座椅子とシノさんの間に身体を滑り込ませ、両膝の間にシノさんを抱える形で座った。
シノさんも僕の意図がわかったのか、僕を椅子の背もたれのようにして身体を預けてくる。
── でもシノさん、僕の本当の真意までは読めてないよね、きっと。
僕は側のお盆を少し遠くに放すと、シノさんの両脇の下から前に腕を回した。
「アハハハハ」
シノさんの笑い声が振動となって、シノさんの背中を通じて伝わってくる。
僕はシノさんの首筋に顔をくっつけながら、右手をゴソゴソとトレーナーの裾から中へ手を差し込んだ。
そうしてシノさんの腹筋から胸元までをゆっくりと撫でる。
耳の後ろにキスをすると、シノさんはビクッと身体を震わせた。
シノさんが振り返る。
「ちょ、千春。何する気?」
「別に? シノさんがまったりとした休日を満喫するように、僕もまったりとした休日を満喫しようかと思って。シノさん、テレビ見てたら? 今、いいところでしょ?」
「えぇ? う、うん・・・」
シノさんは小首を傾げながら、またテレビに目をやる。
わざとらしく僕が、テレビから漏れる笑い声に同調するように笑い声を上げると、シノさんもまたテレビを見始めた。
「アハハハハ」
またシノさんが笑い声を上げ始める。
本当に単純というか純粋というか(笑)。
── さぁてシノさん、どこまで持つかな~。
僕はチラリと、壁にかけてある時計を見たのだった。
here comes the sun act.71 end.
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編集後記
本日も「やまなしちなし」、これがホントの801小節の更新です。
わはは。どうだ!
まったりし過ぎてるだろう!!ザ・まったり地獄!!
そんな与太話はさておき、次週はステルス更新になるやもしれません。
流石に2週続けてのエロ更新は、良心の呵責に耐えかねました(笑)。
まーしかし、この二人、休みといえばいちゃいちゃしてますね。
いや、作者のせいなんですけどね、もちろん。オバさんだって夢みたいのよ(大笑)。
さて、国沢はと言えば、台湾旅行の準備をそろそろせねばなりません。
6月に行く予定なんですが、無謀にも個人手配の旅行で行くつもりなんで、ちょっとビクビクです。
だって台湾でしたいことが決まってるから、パックじゃない方が都合がいいんだもの・・・。
でも海外旅行で個人手配っていうのは初めてなんで、ちょっとドキドキします。
チケット無事とれるかなぁ・・・。ホテル、無事予約できるかなぁ・・・。
英語も中国語もしゃべれないけど(爆)。
が、がんばります。
[国沢]
小説等についての感想は、本編最後にあるWEB拍手ボタンからもどうぞ!