act.39
<side-CHIHARU>
「ただいま~」
今日の献立プラス常備菜を余った材料で作り終えた頃、シノさんが帰ってきた。
「おかえり」
僕はキッチンから玄関先を覗くと、シノさんは靴を脱いでいるところだった。
「シノさん、大丈夫だった?」
シノさんが顔を上げる。
「ん? なにが?」
「なにがって・・・。記者、いなかった? 外」
僕がそう訊くと、シノさんは「ん~」と唸りながら肩を竦め、「いたけど、なぜか近づいてこなかった」と答えた。
── ふぅん、僕の脅しが、意外に効いたっことか。
相手が若い記者でラッキーだったな。多分、個人名出して訴えるって言ったことで、ビビッたのかも。まぁ、この効力がいつまで持つかわからないけど・・・。
「ん? 沈んでるのかなと思ったけど・・・。なんか、嬉しそうだね」
シノさんに顔を覗き込まれ、僕はゴホンと咳払いした。
「早くシャワー浴びてきてよ。ご飯の支度しておくから」
僕はシノさんを追い払うように手を振って、シノさんを今来た廊下に押し戻した。
あの柴犬みたいな黒い瞳でじっと見つめられると、今だに照れる。
今更なにを言ってるんだって言われそうだけど、どうしても直視できない時がある。
30過ぎてるのにあんなに罪のない澄んだ瞳してるなんて、ホント、あり得ないっていうかなんていうのか。
本人に自覚がないのがまた・・・。
罪がないってさっき思ったけど、前言撤回。あの人、罪深過ぎる。
本当に、僕と付き合い始めるまで誰とも付き合ってこなかったっていうのが、信じられないよ。
世の中の女子達は本当に目が節穴というか・・・というよりは、シノさんが気づかな過ぎなんだろうけど。
僕がシノさんの最初の人になれたっていうのは、本当に奇跡的だよね。
この世の中に神様なんていないって僕は思ってきたけれど、まるで僕に対しての何かのご褒美のようだと思える。
こんなに罪深い僕なのに、シノさんみたいなご褒美をくれるだなんて、神様血迷ってるよ。
シャワーの音に混じって恒例の歌声が聞こえてくる。
今晩の一曲は、なぜかゆずの『栄光の架け橋』だった。
僕も、シノさんの影響でJ-POPを聴くようになったので、シノさんが歌う曲のタイトルはわかる。
以前はピアソラばかり聴いていたから、僕も随分様変わりしたものだ。
相変わらずサビが無限ループし始めたので、僕はお風呂場まで行ってドアをドンドンと叩いた。
「いつまでも歌ってないで早く出てきてください! ご飯冷める!」
するとピタリと歌声がやまって、「は~い」と返事が返ってきた。
ふむ。素直でよろしい。
配膳が済んだところで、シノさんが風呂場から出てきた。
「お、美味そう。久しぶりの和食だ」
濡れた髪を拭きつつ、テーブルを覗き込む。
「ちょっと、髪の毛、ドライヤーで乾かしてこなかったんですか?」
僕がそう言うと、シノさんはきょとんとした顔をして「もう随分暖かくなってきたし、自然乾燥でいいかな、と」と言う。
僕は右手で眉間を擦った。
「それじゃ風邪もひくし、髪の毛も痛むでしょ」
僕はシノさんの襟首を掴むと、洗面所に逆戻りした。
「あっ、あ、あっ! ご、ご飯、冷めるよ・・・!」
「なら温め直しますよ」
僕はドライヤーを掴みシノさんの背後に立つと、猛然とシノさんの髪を乾かした。
「イタッ、イタタタタ・・・・じ、自分で、する!」
「もう乾いた」
ああ、シノさん家のドライヤー、イオンターボつきの新しいのに買い替えといてよかった。
買い替える時シノさん結構渋ってたけど、「泊まりの時に僕も使うから」と説得して僕が買った。
シノさんは、僕がお金を一方的に出すことを凄く嫌がる。
まぁ、その気持ちわからないでもないけど、僕からすれば僕の財産は既にもうシノさんとの共通財産って思ってたりもするから、そこら辺もう少し緩くなってもらえたらいいのにって思う。
一緒に暮らすところを探すのだって、それなりにお金がかかることだし。
そこのところ、シノさんとちゃんと話さなきゃな・・・。
結局のところ、料理はそれほど冷めておらず、ご飯もまだよそってなかったから、それぞれの茶碗にご飯を盛った後、僕らはそのまま「いただきます」と食べ始めた。
「うん・・・・。うん、うん」
一口、大根を口に含んでシノさんは何度か頷くと、後は無言で猛然と食べ始めた。
よかった。口にあったようだ。しかしそれにしても、相変わらずの豪快な食べ方。
「おかわり」
「はい」
何がおかしいかわからないけど、なんだかおかしくて笑えてくる。
僕は笑いを堪えながら、シノさんにおかわりのご飯が盛られた茶碗を手渡した。
シノさんはやっと僕の表情に気づき、「ん? なんか、おかしい?」と訊いてくる。
僕は「別に」と首を横に振った。
「いや、顔、笑ってるだろ?」
「笑ってませんよ」
「そんなことないだろ」
「笑ってませんって」
「いやいやいや。そんなことないよ。笑ってるって。なんか思い出したの?」
「え? まぁ・・・なんか、まるでサザエさんみたいだなって思って」
和食の献立に、いかにも「おい母さん、おかわり」「はいはい」っていう感じのリズム。
これまで結構このシチュエーションはあったけど、今更ながらにツボにハマってしまった。
「二人なのに、サザエさん???」
シノさんは頭の上に?マークをいっぱい飛ばしていたけど、仕方ないじゃないか。僕にはそう思えてしまったんだもの。
二人で顔を見合わせ、二人で同時にブッと吹き出した。
「ちょっと、シノさん、ご飯粒飛ばさなないで! 汚い!」
「だって・・・。ご、ごめん・・・。フフフフフ」
僕ら家の外では大事になってるのに、こんなに穏やかな食卓を囲んでいていいのだろうか。
でもそんなこと言ったら、きっとシノさんは、「いいに決まってる」って言うよね。
『俺の家で俺の帰り、待っていて。いつもみたいに』。
電話でそう言ってもらえて、僕は本当に嬉しかった。
この人とこうして、本当の家族みたいにご飯が食べられてよかった。
── あ、家族みたい・・・じゃなくて、もう、家族、か。
シノさんはひとしきり笑った後、また黙々とご飯を食べ始めた。
僕の方はそこそこ食べ終わってお茶を飲む。
僕はシノさんと食卓を囲むようになって、もう以前のようにドカ食いをしなくなった。
今更ながらに考えると、あれってストレス食いだったんだなって思う。
お陰で僕は、少し痩せた。 ── というか締まった。
お陰で、身体が軽い。
「あ、シノさん、これも食べる?」
今日追加で作った大根菜の炒め煮を差し出すと、「うん」と言って、また食べる。
お茶を飲みながらシノさんの食べてる姿を見てたら、なんだか今度はムラムラしてきた。
食欲を満たした後にくる性欲。
僕もつくづくごく普通の『男』と言うか、『雄』というか。
味噌汁を飲んで濡れ光るシノさんのぽってりとした下唇見てたら、どうにかこうにかしてやりたくなってくる。
「あ~、ごちそうさま! 美味かった」
「そ? もういいの?」
「うん。満足」
「お茶飲む?」
「うん」
僕がシノさんの急須にお茶を注ぎ足す間、シノさんは椅子の背もたれに身体を凭れさせ、プゥ~と両頬を膨らませながら大きく息を吐いた。
なに、このカワイイ生物。
僕がテーブルの上の食器をシンクに移動させているとシノさんも椅子から立とうとしたので、「ああ、シノさんはそこに座ってて。食器動かすだけだから」と僕は言った。
「え? 洗わないの?」
「うん、取り敢えず、水につけとくだけ」
「なんで?」
「うん。あ~、はいはい。そのまま、そのまま」
僕はオリーブオイルの瓶を手に取ると、なおも席を立とうとするシノさんを手で制してシノさんの椅子の向きを変え、その前に膝をついた。
「え? なに? なに?」
「あ~、はいはい。そのまま座ってて」
僕はそうシノさんに声をかけながら、シノさんのハーフパンツに手をかけた。
<以下のシーンについては、URL請求。→編集後記>
here comes the sun act.39 end.
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編集後記
エロ書いたど~~~~~~~~!!!!
ああ、なんだかすっきりした・・・。
ここ最近、仕事がうまく行かず気分的にふさぎ込んでいたのですが、その現実逃避がエロとは・・・。人間的にどうなんでしょ、これ・・・(脂汗)。
教育的指導されるかな??? 大人として (゚∇^*) テヘ♪
ということで、編集後記の続きは大人ページに移るとして、いつものご案内ないです。
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[国沢]
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