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act.07


<まるで掲示板に書いてるコメント!!・・・みたいな(大汗)+顔文字つき>

 実のところ。
 万喜子と彰が芳の落ち武者振りに気を取られていた間、彼らのお殿様にも重大な変化が訪れていたのだ。
 芳が武道館に顔を見せたあの日。
 目に見えて動揺していたのは確かに芳の方だったが、真司にも少なからずの影響を与えていた。霧島親分の『大人の男フェロモン(笑)』が。
 霧島が芳を介抱している姿を見た時。
 真司は初めて、ピンクな空気を感じたのだ。目の前の光景に。
 それは、芳自身が霧島に対してそういった意識をした影響に他ならなかったが、そんな細かなことまで真司には分かるわけがない。
 ただ、真司が感じたことは、ベンチに横たわる芳とそれを介抱する霧島の姿が究極的に『似合って』いて、その二人を包む雰囲気が妙に『艶っぽかった』ということだ。
 芳が類い希なる美少年であるのは言わずもがなであるが、霧島もまた県内の武道界では一二を争う美形である。その二人が身体を寄せ合っている(ように真司には見えた)様が絵にならないはずがない。
 今まで霧島に性的な魅力も衝動も全く感じたことがなかった真司だったが、あの二人が一緒に並んでいるのを見て、ガツンΣ(゚□゚;)\と頭をやられたような気分になった。
 ── だって、芳があんな目つきで霧島を見ていたから・・・(;ω;)。
 これは、芹沢真司17年の軌跡の中での重大な変化だった。
 これまで、恋愛のれの字も意識したことがなかったお殿様が、己の恋愛感情を自覚する前に『嫉妬心』なるものを己に突きつけられた瞬間だったからだ!!
 しかもそれと同時に、自分の中の『初恋心』に気付かされた瞬間でもあった。
 そりゃもちろん。
 以前から、小泉芳のことは好意的に見ていた。
 最初の出会いは苦々しいものであったが、芳が真司のバンドに入ってからの彼の努力する姿勢は真司も唸るほどの頑張りだったし、そのひたむきさ加減は人として凄く好感が持てた。それに芳もどうやら自分のことを気に入ってくれているようだし、知り合って間もない友人ではあるが、急速に親しくなった。
 そう。
 はっきり言って、真司は芳のことが『好き』だった。
 しかしその『好き』が、どんな『好き』か、お殿様には今ひとつ自覚がなかったのだ。
 何せ今まで恋愛事には縁がなかったし、万喜子や彰が彼氏・彼女と言った類の『種族』と付き合ってる話を聞かされても、それが何を意味するかよく理解できていなかったのが正直なところだ。
 一緒に映画に行ったり、食事をしたり、好きな音楽を聴いたり。
 それらのことは友人関係の間で行われることと一緒で、恋愛とはその延長線上にある至極簡単な現象である、という程度でしか考えていなかったのだから。
 それなのに、今はどうだ。
 真司はその考えを改めないといけない事態に陥った。
 恋愛感情とは、友人に対するそれと、全く違う、と。
 真司は初めて、いつかの夜、部室で焼き肉大会をした時に芳が見せていたもの悲しそうな表情の下に隠れている意味が何であるかを理解した。
 好きな人に対する想いは、友人に対するそれより途轍もなく重く、辛く、苦しく、そして自分自身が制御できなくなるというとんでもない種類の感情であることに。
 真司はそのことに驚愕した。
 何せこの自分が、武芸の道では師匠の次に偉大だと感じている霧島に対して、あろうことか嫉妬しているだなんて(゚ロ゚;)!!
 あの場では、そんな自分が恥ずかしくて、何とか誤魔化すことで精一杯になってしまった。
 ── あろうことか神聖な武道館で、あんな感情に遭遇する羽目になろうとは。
 芹沢真司、一生の不覚。
 流石にお殿様、痩せても枯れても、一本気な男道である(笑)。
 芳が前に好きだと言っていた片思いの相手が霧島であるはずはなかった。
 芳がそう発言した時点で、芳と霧島には直接の面識はなかったはずだから。
 だが、武道館で芳が霧島に対して見せたあの瞳の色は、まさしく『恋する乙女男』の色に他ならなかった。── というより、他の人間がどう見たかは知らんが、真司には少なくともそう見えたのである。
 ── それに・・・、何だか似合いだったし。
 真司が嫉妬心の次に覚えた初めての感情。
 恋愛的敗北感。┏(_ _|||)┓
 万喜子と彰が仕組んだ『愛のカンフルレッスン』は、恋愛初心者である真司には学習すべきカリキュラムが多すぎて、オーバーテイク気味であった。
 真司は、恋心の持つ素晴らしくバラ色ないい面を知る前に、その反対側にある苦しく辛い面を次々と突きつけられたのだ。
 誰がどう見ても、芳と霧島の絵面は美しい。
 芳の隣に坊主頭の凶悪顔なでくのぼうが立っているより、霧島のようなはんなりとした美形が立っている方がなんぼか似合いだ。違和感がない。いや、むしろその方が『環境影響的に素晴らしい』。
 芹沢真司、究極に混乱すると意外に難しい思考回路の方へ迷い込むタチらしい。
 真司は初めて、自分の容姿が恋愛する上で障害になるのではないか・・・と素朴な疑問を持ち始めたのである。
 小泉芳の思い人が実は他ならぬ自分で、おまけに芳自身も霧島の存在に危機感を感じて自信喪失をしていたなんてこと、当然真司が知る由もない。
 それはひとえに、シャイな芳が真司に対して、きちんと「僕はあなたが好きです」と告白をしていないところに原因があるのだが、互いに恋愛に関しては不器用同士ときているから仕方がない。
 芳も過去に女の子とそれなりにおつき合いしたこともあるのだが、何せいずれも向こうからの告白によって始まった恋愛ばかりで、自分から好きになったのは芹沢真司が初めてなのである。
 とにもかくにも、恋愛ベタに関しては、芳以上に『王様』級な真司だ。
 世の中に恋の駆け引きという綱引きが存在していることも全く知ることがないお殿様は、己のダメさ加減に打ちのめされていたわけだ。あの武道館の日よりずっと。
 で、新学期の朝の発言に繋がるというわけだ。
 幼なじみの健史が驚愕する、芹沢真司の生返事と溜息というシーンに。
 
 
 朝のホームルームが始まっても、真司の腑抜け振りは変わらなかった。
 クラス担任でさえも、出欠確認で生返事を返してくる真司の様子に動揺し、「お前、熱あるんなら早く帰れ(;◎o◎)」と思わず声をかけたぐらいである。
 朝健史が感じていた動揺がクラス全体に広がるのは、そんなに時間のかかることではなかった。
 ホームルームが終わった今では、女子達の小泉王子騒動など、既にとん挫している。
 真司のクラスは、そんな異様な空気をしょったまま、全校集会へと突入したのである。


 『── え~、であるからして・・・・』
 壇上で赤鼻の校長先生が、恒例の挨拶を行っている。
 焼酎好きで有名な校長先生は、そのせいで小鼻が赤く、まるでトナカイのようなルックスをしている。
 まぁ、そんなマニアックな描写はさておき、体育館に集まった生徒達は、一様に不穏な雰囲気でざわついていた。
 その理由の一つ目は、学園のアイドル・小泉芳の変化に。
 そしてもう一つの理由は、学園のサムライ・芹沢真司の変化に。
 結局のところ、芳も真司もこの学園内では、一種のスターなのだ。その種類は異なるが、話題性には事欠かない。
 真司は、自分に向けられる好奇の目には全く気付くことなく(この点においては、今も昔も変わらずだ)、横目でぼんやりと数列横の斜め前にいる芳の後ろ姿を見た。
 真司は今朝その件に関して女子達がどれほど騒いでいたかは知らないが、少なくとも芳が『変わった』ことだけは、はっきりと分かった。
 夏休み中、ずっと筋トレしていることは知っていた。
 そのお陰で、一学期までは着ている制服がどこかブカブカで頼りないイメージだった身体が、今では健康的な男子高校生らしく、綺麗な身体のシルエットを醸し出している。
 もちろん真司ほど筋肉質ではなかったが、芳のような顔つきにはあれぐらいの適度な筋肉感がよく合っていた。元々白人の血が混ざっているので、筋肉が尽きやすい体質だったんだろう。
 これまでの薄幸の美少年はすっかりいなくなってしまったが、その男前振りは確実に上がっていた。
 女子達の彼を見る目つきが、『テレビの画面の向こう側にいる人』的であるのも仕方がない。
 しかし芳が変わったのは、その外見だけではなかった。
 一学期までは、その美形振りが全面に出て、そこか表情の薄い感があった芳が、妙な親しさを感じさせる愛くるしい表情を浮かべるようになっていたのだ。
 元々ハンサムだった人間が、人なつっこさを身に付けてきたのだから、鬼に金棒だ。
 それもこれも、芳が真司とのことを考えすぎて、やや壊れ気味になってしまったことが結果的に彼の人柄にいい効果をもたらしたに他ならない。
 さっきも、体育館に入り際、真司とばったり出食わした芳は、極上の微笑みを浮かべた。
 それだけで周囲の女子連中をノックアウトしたその微笑みの意味は、真司に対して『俺、今、真司に認めてもらえるよう一生懸命頑張ってるからね』というものだったが、恋愛敗北感に苛まれている真司が、素直にそれを理解できる訳がない。
 真司が理解したことと言えば、せいぜい『芳の男前さ加減に磨きがかかっている』ことと、『きっとそれは武道館のあの日がきっかけになっているに相違ない』ことである。
 どちらとも正解とはいえるが、真司は芳が霧島にラブな好意を抱いたと誤解しているからして、その読解力がなぁんにも役に立たないことは明白である。
 結局、今や真司の頭の中では以下のように変換されている訳だ。
『俺、今、真司に認めてもらえるよう一生懸命頑張ってるからね』→『僕、今、霧島さんにトキめいちゃって、お肌も心もピッチピチなの(^-’*)』
 こんな問題が学期末テストに出たら、芹沢真司はいつも以上に見事0点だ。
 ── ハァ・・・_| ̄|○
 真司が、本日幾度目かになる溜息をまたつく。
 周囲が、そのたかが溜息に相当怯えていることも知らず、お殿様は全く持って傷心なのである。
 お殿様の恋心、明日はどっちだ(@@;;;)?!!・・・みたいな(大汗)。

 

公務員ゴブガリアン老舗 act.07 end.

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編集後記

先週はゴブガリアンお休みしてすみませんでしたm(_ _)m 。
主人公が壊れているのと同時に、作者も壊れ気味でございます(大汗)。身体的にも精神的にも。
その壊れっぷりは、本日更新分を読んでいただければ分かると思います。
小説に顔文字って、あんた・・・(脂汗)。ねぇ・・・。
ホント、すんません。スランプっす。
先日、メールをいただいた読者の方に「小泉君も真司君も天然キャラですよね」と言われ、ようやくゴブガリアンの敗北原因が分かりました。

天然キャラ同士が恋愛しあうって、スコスコと進行する訳がねぇ・・・(力汗)

道理で筆が進むわけがない。
この二人のうち、進行役がいない訳ですからね。ええ。
いつもはキャラが勝手に動いてくれるのを作者が追って(または観察して)いくだけでいいんですが、この二人に関しては全然動きゃしねぇ・・・(滝汗)。動いても、マゴマゴするばかりで、ホントその場でグルグル回ってる。
や~、青春ってこんなものですかねぇ・・・。きっとそうなんでしょうねぇ・・・。
そういえば、オイラも告白できずにそのまま卒業したってこともありましたねぇ・・・(遠い目)。リアルと言えばリアルですけど。小説が進まないと困っちゃうよなぁ・・・。

ええと。話題は変わりますが。
最近本編より編集後記の方が長いんじゃないかってツッコまれないかと不安なんですが(汗)。
前回言いっぱなしになってたWBCのことについて。
もう既に随分昔の話っぽくなっちゃって、今頃取り上げる話題ではありませんが(汗汗)。
書きくさしにするのもなんなんで。
国沢がスポーツ番組を見るのが好きなことは、常連様にはお分かりのことと思いますが、これまで野球についてはあまり食指が動かなかったんですね。でもオイラ、イ●ロー選手は好きなんで、ワールド・ベイスボール・クラシックは見ようと思って見てたんです。
そしたらあ~た、いるじゃないの、かわいこちゃんが!!!
某九州球団の川●選手と某ガム屋球団の西●選手。
や~、最近の野球選手は線が細い人いますね~。イ●ロー選手ぐらいだと思ってたのに。
かわいいだけならまだしも、川●選手と西●選手、何だかやたら仲がいい。守備の位置も近いせいか、グラウンド上でも親密感たっぷり。ベンチにさがれば、途端にスキンシップの開始。


 
デキてんのか、この野郎!!!(これじゃ酔っぱらいのオヤジだよ・・・(汗))


ふたりともイケ面なんで、余計に目立ちます。
特に川●選手にいたっては、皆に可愛がられキャラなのか、他の選手からもよくなでなでされてる。
決勝戦では、川●選手がありえないようなエラーを連発して(本来彼は守備が凄く上手いので、よっぽど固くなってたんでしょうね)、その度に西●選手に慰められてました。
モーホースキーな世界の住人なら、ベンチで西●選手が川●選手の両頬をグリグリして慰めてた映像を見た瞬間に、こう思ったはずです。

なんだよ、おい!
年下攻かっ?!!!


・・・・。

国沢、『腐女子』という言葉、実は嫌いなんですが、やっぱ脳味噌は完全に腐っとりますな(汗)。

[国沢]

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