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act.22

 劇場の前は予想通りの人盛りで、羽柴とショーンの乗った車は、一旦その前を通り過ぎることにした。
「大丈夫。裏手に車止められる場所あるから。そこ右に曲がって」
 右にウィンカーを出しながら、羽柴は窓から見える劇場の姿を見上げた。
 本当に質素というか素朴な田舎の古びた劇場のように見える。
 劇場が町一番の社交場として華やいだ時代の面影をそのまま残しているような外観だ。
 劇場まで来る道すがらショーンが教えてくれたような、ビッグネームばかりが揃う公演の数々をこなしているようにはとても思えない。
「ここが君の音楽人生の出発地点なんだ」
 バックミラーに写る劇場の姿を見つめながら羽柴がそう呟くと、ショーンは照れくそうに「うん」と答えた。
「考えてみれば、俺の本当のパパがここのステージに立っていなかったらママにも会っていなかった訳だから、音楽の出発点というよりも俺そのものの出発点かもね。パパがここに出ていた頃はもちろん別のオーナーがここの経営をしてたんだけど、オーナーがクリスに代わってからも外観はそんなに変わってないんだよ。もちろん、痛んだところはこまめに直してるらしいけど」
「へぇ・・・。普通なら、興行的に成功している劇場は数十年ごとに全面改装したりするところが多いのにな・・・」
「きっとあの外観が好きなんじゃないかな。あの如何にもショービジネス界の黄金期を象徴した感じの装飾がさ。昔はクリスも、ステージに立ってたらしいから」
 ふ~んと羽柴は聞き流したが、いざクリスを目の前にして、ショーンの言っていたことを初めて理解した。
「ヘイ、生意気小僧!」
 劇場の事務室に繋がる通路でショーンと再会を果たしたクリスが、開口一番そんな憎まれ口を叩きながら近づいてくると、羽柴はクリスの姿の良さに一瞬気負いを感じてしまった。
 彼がショービズの表舞台から身を引いてしばらく経つとショーンは言っていたが、羽柴には少なくとも、ショーンより芸能人的オーラを彼が醸し出しているのを感じた。羽柴の感じた気負いは、正しく著名なアーティストに突然出会った時に万人が感じる、高揚感を伴った独特の緊張感だ。おそらく、羽柴以外の人間がショーンに対して等しく感じる感覚に等しい。羽柴は不思議とショーンに対してそんな感情は覚えなかったが、クリスに対してはその緊張感を感じた。彼には、ただ姿が良いという以外にも、その世界の第一線で活躍してきたという独特の迫力がある。
 クリスは、さっきの憎まれ口とは対照的に、熱烈な仕草と表情でショーンを抱きしめた。ショーンも心地良さそうに身を任せている。
 羽柴はそれを見て、すぐに緊張を解し、心底ほっとした。
 ショーンの義父であるスコットといい、このクリスといい、やはりショーンの故郷には彼を心の底から愛する人々が昔と変わらず彼を支えてくれるのだという確かな安心感だった。
 ── これから、俺が彼の側にいなくても大丈夫そうだ。
 そう思うと何だかショーンを支えてやれるのが世界で自分しかいないと思っているようで、自分自身、自惚れたような感じが否めなかったが、事実羽柴はそう思った。『俺がいなくても、彼はきっと大丈夫』だと。
 そのことは、きっとショーンのためにもなるのだと、羽柴は思った。
 やはり、生まれ故郷で穏やかな休息を取ることが一番彼の心を癒すだろう。
 声が出るようになって、一見完全に復調したように見えるショーンだったが、羽柴には彼が完全に回復したようには思えなかった。
 言葉の端々にネガティブな台詞が出てくるのは事実だったし、時折見せる不安そうな表情は、やはりまだ心のコンディションが不安定なせいだろう。こんな状態でまた嵐のような様の世界に戻るのはよくない。きっとまたすぐに症状が逆戻りしてしまうに違いないのだ。
「思っていたより元気そうじゃないか。てっきりげっそり痩せて帰ってくるのを密かに期待してたのに」
 美しい形の唇を器用に歪めながら言うクリスの言葉に、ショーンも「アンタのマズイ手料理を食わされないように体重管理だけには細心の注意を払ったんだ」とやり返す。
 どうやらクリスは、ショーンの時折ちらりちらりと覗くセンスいい毒舌の師匠であるらしい。なるほど『心の師匠』という訳だ。
 二人は嫌みの応戦をやり合って、ニッコリと微笑みあうと、また固く抱きしめ合った。
「クリス、紹介したい人がいるんだ」
 ショーンが羽柴の方を振り返りながら言うと、初めてクリスと羽柴の視線が合った。羽柴は再び軽い緊張感に包まれる。
 クリスは、先程とは違った何とも艶やかな微笑みを浮かべ、洗練された身のこなしで羽柴の前に立った。服装は、白いボタンダウンのシャツに黒い綿パンツというシンプルな格好だったが、華やかな雰囲気の彼には余計な飾りなど、どうせ不要だ。
「初めまして。クリス・カーターです。よろしく」
「こちらこそ・・・。コウゾウ・ハシバです」
 羽柴が名乗ると、クリスが少し片眉を上げて微笑みを浮かべた。そしてショーンを返り見ながら、「彼はジャパニーズか」と言った。
「へぇ、クリス判るの?」
 ショーンが驚くと、まぁなとクリスは言った。クリスは再び羽柴に向き直ると、羽柴の手を握りながら、
「私にも昔日本人の友人がいましてね。一時期彼らとは随分親しくしていたものですから・・・。懐かしい」
 と言って微笑みを浮かべた。その微笑みは、彼の心の中にある本当の優しさが滲み出たような笑顔で、羽柴をリラックスさせるに十分なものだった。
「ショーンからもう引退されたと伺っていたので、もっと年輩の方を思い浮かべていたんですが。正直、驚きました。その若さでこの劇場のオーナーをされているとは」
 羽柴の台詞に、クリスがショーンを睨み付ける。
「お前、客人に俺のことをどういう風に吹き込んだんだ?」
「ありのまま」
「・・・判った。もうそれ以上言わなくていい」
 口を尖らせるクリスに、羽柴もショーンも笑い声を上げた。


 「それで? ミスター・ハシバとお前はどういう関係なんだ?」
 今では劇場の応接室になっている劇場奥の個室まで歩きながら、クリスは二人を振り返りながら言った。
「え?!」
 ふいに顔を赤らめるショーンに、クリスはちらりとショーンの少し後ろをついてくる長身の日本人を見た。
 不思議と、クリスの会う日本人は長身の男が多いように思う。クリスと一時期親しかった男も、今見る日本人と変わらないぐらいのタッパがあった。その男もクリスが唸りを上げるほどの男っぷりだったが、ショーンの連れてきたこの男もなかなかどうして、魅力的である。
 クリスはショーンの反応を見て、すぐにハハ~ンときた。
 なんだ、ショーンは今、このジェントルマンにお熱を上げてるのか。
 以前から、ショーンの成長を見つめ続けてきたクリスだからこそ、すぐにそのことが判った。
「だから、休みの間、ずっと彼の家で世話になっていたんだろ?」
 ショーンからメールで連絡を受けていたクリスは、スコットより事情を知っていた。スコットが想像するよりショーンのスランプが手酷いものだということも理解していた。
 目の前の彼がショーンが苦しんでいる間、ショーンを支えてくれたことも、彼の優しげな瞳を見てすぐに判ったことだ。
「・・・どどど、どんな関係って・・・」
 尻窄みの声で言い淀むショーンを余所に、羽柴が「ニューヨークで偶然知り合ったんですよ。幸いというか何というか、その時僕はロックには疎くて。普通に彼と接したことが返ってよかったんです。随分懐いてくれて、僕も年の離れた弟ができた感じで楽しませてもらいました」と言葉を繋いだ。その羽柴の横で、ショーンが、「そうそう」と相づちをうちながら微笑んでいるのを見て、クリスは『ああ・・・』と思った。
「そうですか」
 クリスは笑顔でそう答えながら、応接室のドアを開けるために顔を二人から外した瞬間に、苦虫を噛んだかのような渋い表情を浮かべた。
 ── なんだってまぁ、このガキは、またハードルの高い恋愛をしてるんだか・・・
 クリスはそう思ったが、次の瞬間には自分が苦笑いを浮かべていることに気が付いた。
 それがショーンらしい、とも思ったのだ。
 以前、ショーンに新しいガールフレンドができる度に、彼は彼女達に対するクリスの評価を聞きたがって度々電話やチャットをしかけてきていた。
 ショーンの恋人がことごとく業界で華やいだ人気を誇る女の子達ばかりだったので、その世界に詳しいクリスに判定してもらいたかったのだろう。自分の選んだ相手は、果たして合格に値すべき人間なのか、と。
 本人は無意識に行っているようだったが、クリスからしてみればそれは、ショーンの不安な気持ちの裏返しだったに他ならないように思えた。
 本当にこの人でいいのか。この人なら、迷いなく自分をさらけ出していいのか。本気で好きになってもいいのか。
 そう。
 つまりショーンは、ショービズの世界に入ってから今まで、自分から本当に好きになった人がいないのだ。
 いつもいつも、周囲に合格のハンコを押されて、ようやく付き合い始める。
 何だかそれは、似合わない服を試着して、不安げに試着室から出てくるような感覚に似ていた。
 そんな恋愛の仕方は、ショーンがこの町にいた頃にはなかったことだ。
 ショーンが初めて大失恋した相手と今では同じ屋根の下で暮らす身になったクリスとしては、何とも言いにくいことではあるが、あの時のショーンの方が正しく等身大の彼そのものであり、必死に生命を燃やしていた。迷いはあっても、そこに躊躇いはなかったのだ。
 町から離れて、久しくそんな感じを失っていたショーンだったが、久しぶりに会うショーンはすっかりその時の感覚を取り戻しているように思える。目の前の日本人のお陰で・・・。
「さ、どうぞ」
 クリスは、ドアの鍵を開けて二人を中に通した。
 応接室とは言っても、昔クリスが生活していた部屋だ。
 ショーンが足繁く通っていた時も、随分洒落たファニチャーや小物があちらこちらにしつらえてあって、随分と気の利いた居心地のいい部屋だった。
 今も殆どあの時のままで、劇場を訪れる特別なゲストを迎える時などにこの部屋を貸し与えている。町の冴えないホテルよりずっと気が利いているこの部屋に喜んで泊まる人間も少なくない。
 クリスがソファーまで案内すると、羽柴は感心したように室内を見回しながら腰を下ろした。
 その瞳の色を見る限り、彼もなかなか家具の価値が判る人間らしい。
 もう熟年の日本人老紳士ならいざ知らず、おそらく自分より年下の日本人青年がそんな顔つきをして部屋の物を眺めているということは、そういう環境で育ったか、そうでなければ本人の生活環境はともかく、そういう世界にも縁があるということだ。
 ── まいったな、ショーンのヤツ。これは何とも難攻不落の相手かもしれないぞ・・・。
 この部屋にある物は、クリスが香港にいる時代から磨き上げた審美眼の中から選び抜かれて買いそろえられた物ばかりだ。
 過度なほどの豪華さを誇る調度品は敢えて選ばず、素朴だが、職人が拘りに拘って作ったハンドメイドの逸品が揃っている。
 そのような品の違いが分かるということは、『本物』があるところに触れる機会があるということであり、つまりそれは男のいる世界が充実した一流の人間が集う世界と縁があるということである。となれば、ショーンみたいなガキ(いくら魅力的で世界中に愛されたロックスターだとしても)が付け入る隙などないくらいに素敵な『大人』の恋愛を彼がしている可能性は高い・・・。
 ── いくら魅力的だからっていって、なんだってまぁこんな男にまいっちまったんだか。
 部屋の片隅にある小さなバーカウンターで軽く口当たりのいい白ワインとショーン用のマスカットジュースをグラスに注ぎながら、クリスは軽いため息をついた。
「丁度枝つきの干しぶどうを貰ったもので。いかがですか?」
 クリスは、彼らの前のローテーブルにグラスと枝つきの干しぶどうを乗せたトレイを置いた。
 クリスは向かいのシングルソファーに腰を下ろしながら、「本当はドモーリ社のカカオ100%チョコレートとブランデー・・・といきたいところですが、それをするにはまだ時間が早い」と言った。
 ショーンは、いつも自分の前では粗野な口ばかり叩いているクリスの、そんな品のある会話を聞いて、少し驚いた顔つきをしている。
 しかしクリスは、羽柴を見越して敢えてそう言ってみた。相手がどんな人物か探るためだ。
 クリスだって、目の前のショーンを参らせた男が、どんな人間か知りたい。
 羽柴は少し考えた風だったが、やがて人懐こい大きな笑顔を浮かべると、こう答えた。
「確かに岩塩と一緒に楽しむと本当に贅沢ですよね。けれど僕は、家の近所のケーキ店で売ってる安いミルクショコラの方が好きなんですよ。安いなりにチョコとミルクのバランスが取れていて、また一個ずつ大きさや形が明らかに違ってるんですよね。それを作っているおばあちゃんの中風が最近特に酷いせいで・・・」
 羽柴がそう言っている途中に、クリスは堪えきれなくなってワッハッハと笑い始めた。
 二人ともがぎょっとしてクリスを見つめる。
「いや、失礼、失礼。なるほど。確かに美味そうだ。ま、食べて。その干しぶどうも美味しいから。本当なら、劇場を案内したいところだが、生憎今日は、そこら辺中、乳臭いガキばかりで・・・」
 その言い草に、今度は羽柴が笑った。
 途端にその場の微妙な緊張が完全に解れる。
「な、今夜はスコットの家でディナーだろ? なぁ、羽柴さん、夜までいるんだろうね。なんなら、今日泊まっていったら? 明日はニューイヤーズ・デイだし。スコットの家が手狭なら、ここに泊まれる。ま、一晩中ホールの方はうるさいときちゃいるが・・・」
 丁度のタイミングで、ホールの方からギターの唸るような演奏が聞こえてきた。
 クリスが立ち上がりドアを開け、案の定の大音量に派手に顔を顰めるのを見ながら、ショーンも微笑んだ。
 どうやら、クリスも羽柴のことを気に入ったらしい。
 クリスが余所行きの顔を取り繕わなくなったのが、いい証拠だ。
 ── よかった・・・。
 ショーンはやっと心底落ちついたような心地になった。
 
 
 ホールを覗いてみるかと言われ、ショーンは「うん」と頷いた。
 羽柴と共に舞台袖から覗いてみると、いつも以上にぎゅうぎゅう詰めになった会場がうねるように動いていた。
 町中の学生達はおろか、町の外からの客も混ざってのランチキ騒ぎだ。
「今日はスカウターも来てないからな。純粋な意味でのお楽しみパーティーさ」
 クリスがショーンの耳元で怒鳴る。
 いつもはレコード会社のスカウターやプロデューサー達が出入りしているので、ステージは多少緊張したものになることが多いが、それ抜きならそんな緊張もない。確かに、ステージ上に次々と現れる出演者達も、自分達の持ち時間の中でのびのびとパフォーマンスしている。
「いやぁ、こんな世界もあるんだなぁ」
 羽柴は感慨深げに言う。ショーンが「どうして?」と訊き返した。
「いやぁ、俺は学生時代スポーツに明け暮れてたから。別世界だよ。音楽も伯父の影響で昔からジャズばかり聴いてたし。友達にもバンドマンはいなかった。・・・ショーンも、こんな風だったのかい?」
「俺はバンドは組んでなかったよ。高校時代は音楽好きなこと、皆に隠してたしね。でも、クリスが俺を解放してくれた」
 ショーンがクリスを見つめる。クリスはその視線を受けて、懐かしそうな顔つきをしていた。
「丁度この劇場にロックオペラの公演が来ててね。そのステージに上げてもらえたんだ。それがきっかけ」
「へぇ、いきなりプロの舞台に上がれたのか。流石才能のあるヤツは凄いなぁ・・・」
 羽柴が何の気なしに言った言葉に、ショーンは内心チクリとくる。
 今の状況を考えると、その『才能』が本物だったのかどうか揺らいでしまう。
 なんせ今、ニューヨークでは自分の代わりのスタジオミュージシャンがショーン・クーパーの仮面をつけてギターの演奏をしているのだから。
 代役でなんとかなるものであれば、始めから自分なんて必要ない。
 ショーンにはそう思えてならなかった。
「ショーン、今日はクリスマスの日みたいにギター弾かないの?」
 しばらく開いた沈黙の後に羽柴がポツリと言う。
 ショーンはドキリとして、俯いていた顔を上げた。
 羽柴の向こうに、羽柴とショーンを悟りきった表情で見つめるクリスがいた。
 今の一言で、なぜショーンが羽柴に夢中になったか、彼は完全に理解したに違いない。そういう表情だった。なぜなら、クリスにはショーンがギターを弾けなくなったことを教えていたからだ。
「今日はコウに貰ったギター家に置いてきちゃったし、それにあの日と違って、ギャラリーが多すぎるよ・・・」
 そんな弱気なことをショーンが口にした瞬間、クリスが横やりを入れてきた。
「ギターなら、とびきり特別なのがあるさ」
 クリスが一旦ステージ袖から姿を消し、次に姿を見せると、その手にはシャンパン色のレスポールが握られてあった。
「・・・え、これ・・・」
 ショーンは思わず絶句してしまう。
 あの日。
 ショーンが自分を解放するために初めてこのステージで手にしたレスポールだった。
 そのギターは、ロックオペラの公演中だったジョン・シーモアの劇団所有のギターだったはずだ。
 それがなぜ・・・。
 ショーンが驚いた顔でクリスを見ると、クリスは「いいギターだったから、ジョンから譲り受けたんだ。お陰でとんでもない貸しをあいつに作っちまった」と顔を歪める。そして、ホラとショーンにそのギターを押しつけた。
 あのずっしりとくる独特の肌触りがショーンを総毛立たせる。
 一体このギターを獲得するのに、クリスはどれだけの金額を支払ったのだろう。おそらくそれは、ショーンがミュージシャンとして初めて開花した記念にと手に入れたものに違いなかった。
「思い出のギターなんだ」
 羽柴の声にショーンが顔を上げると、羽柴の温かい微笑みがあった。
 その笑顔を見て、思わず鼻の奥がツンとなった。
「そうなんだ・・・。そうなんだよ・・・」
 ショーンはそういうだけで精一杯だった。
「おら、行って来い。あと10歩も歩けばステージだ」
「え・・・、でも、あの子達がまだ演奏してるし、次のプログラムだって・・・」
「何しおらしいこと言ってる。ここにいる連中が、あのショーン・クーパーの飛び入りを拒む筈がない。寧ろ狂喜乱舞して迎えてくれるさ。奴らにとって今夜はまさにお祭りだな」
 クリスはそういうと、舞台袖の最前列にいる今日の司会を勤める男の子を呼びつけ、何やら耳打ちをした。
 その少年は、一瞬ギョッとした顔をした後、クリスが振り返る方向を何度も見やって、興奮したかのように顔を上気させた。ステージ上の演奏が小休止するとすぐ、彼は震える手でマイクを握って、ひっくり返った声でショーン・クーパーの突然の訪問を告げた。
 ステージ上は勿論のこと、会場中が爆発しそうなほどの歓声に包まれた。その興奮しきった声は、直ぐにショーンコールへと変化する。
 それを聞いてもまだ物怖じしているショーンの肩を、羽柴の手が後ろから押した。
 背中に大きな温かい温もりが触れ、ショーンは自分の身体の震えがピタリと止まるのを感じた。
 羽柴の後押しにつられるかのように、ショーンは一歩一歩ステージに近づいていった。
 そして羽柴の手が放れたと思ったら、そこは眩しいライトの中だった。

 

please say that act.22 end.

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編集後記

今週は『ハハ~ン』さんの登場です(笑)。ターバンは巻いてないけど。←判る人しかわからんネタじゃ(汗)。
久しぶりのクリス。いかがだったでしょうか。相変わらず宝塚のようにお花が後ろに飛んでいるような感じで(笑)。そして天の邪鬼。相変わらずです。
先週はアメリカの正月は、日本みたいに正月休みなどない。。。みたいなことを書きました。ネットで調べたら、そのようなことを書いているところが多かったので・・・。
でも国沢、ここでちょっと考えました。
そういえば、アメグレ書いてた時は、そんなこと調べもせずに書いていたので、おもくそ日本的スケジュールのお正月が展開しています(大汗)。も、もう直すになおせねぇ・・・。(脂汗)
一応、企業の中には企業独自で休みを設定するところもあるということなんで、そ、そういうことに・・・←かなり無理っぽい。
アメリカでは、正月よりもクリスマスやイースターの方が盛り上がるようですね。知りませんでした。その点で言うと、日本の方が休日は多いのかな? どうなんだろ。
アメリカのことをよくわからんでアメリカ舞台の話を書いてしまうという無謀さを、改めて実感した国沢なのでした・・・。

[国沢]

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